生姜異物強壮

ミッシング・レポートの生姜異物強壮のレビュー・感想・評価

ミッシング・レポート(2018年製作の映画)
3.4
湖畔で失踪した(いかにもツインピークスのローラ的な)バイト女子。被疑者となるモテ教授役のガイ・ピアース。ジワジワと追い詰める刑事役のピアース・ブロスナン。お二人とも「いい仕事」してるんですよ、はい。

ただストーリーが……これを書くとネタバレに触れるので歯がゆいが、とにかく最後までモヤモヤした展開なので「高評価しにくい」。たとえるなら、『ウーナ 13歳の欲動』的な。

そう、教授が犯ったか否かは、観客に明示されない。彼は「関係ない、濡れ衣だ」と主張しながらも、何かにつけてビクビクしまくってる。実は犯ったのではないかしらん?と観客自身にも疑わせる演出は、たしかに上手い。

観終えて想うに本作 ── 要は、教授が有罪か無罪か、って話じゃなく、「近しい人(特に家族)に、最後まで本当のことは言えないダンナさんって結構、世の中にいるよね」、って話を描きたかったのかなァ?…と。

たとえば、教授の娘が飼ってたウサギがネズミ捕りで死に、教授はそのことも娘に言えず、「いなくなった」ことにしている。ウサギが死んだことで、何の因果かネズミが生きて捕まった。娘にせがまれ、教授はそのネズミを飼うことを許す。物語最後のショットは、非常に暗喩的。そのネズミが夜中、ハムスターケージの中で回し車をスピンさせてる様子を見やり、教授が寝室に上がっていくシーンでEND。もちろん、ウサギ=失踪した娘で、囚われたネズミを教授に見立ててるんだろう。だから「空回り(スピニング)する男」というタイトル。

哀れ教授は、これからも「見えぬケージ」の中で苦悶する日々を過ごすのだよ、きっとね。すべては嘘に嘘を、際限なく重ねることで出口を失ったがゆえに──。

てな具合に、作品自体は「良く書けた小説」みたく【ウソは自らを苦しめる】という法理を見事に描き切ってはいる。けど……エンタメ映画としては精神的に重苦しく、キツい。強いて言えば、連続TVドラマのワン・エピソードぐらいが「しっくり来る」題材だろか。

しかしまぁ、こんな渋い役どころを(淡々と)ブロスナンも演じられるようになったのねん。ボンド役の先人コネリーと同じく、老け方までがカッコいいぜ。

ただ、「Wピアース」コンビにしたのは微妙だ。だってブロスナンは背丈が高く(188㎝)、容疑者のガイ・ピアースを5㎝ほど「見下げて」しゃべってる。せっかくガイ・ピアースが、どこかオドオドした神経質な演技をしても、身長からして威圧されてるように映るために(その演技力が)スポイルされてしまってる感じ。容疑者という役柄以上に、その"不利"が気の毒にも思えた。