生姜異物強壮

世界が燃えつきる日の生姜異物強壮のレビュー・感想・評価

世界が燃えつきる日(1977年製作の映画)
3.8
世界が滅び、生存者らが旅立つ。ひとりが事故死。女が加わり、黒人が巨大GBの餌食に。子供が加わり、窃盗団に捕まるが…(以下 略)
 
 
↑↑↑ 「いかにも!な無理くり展開だらけで、つまらんっ★」
 
 
…と鼻で嗤う前に、想い返してみよう。本作の制作年代の十年前、アメリカ現代史に輝く、冷戦さなかの1960年代を……。

映画だと『火星着陸第1号(1964年)』、『ミクロの決死圏(1966年)』。TVドラマだと 『宇宙家族ロビンソン(1965~68年)』…とかとか、これらの作品はSF作品っちゃSF作品だが、同時に「ディザスター系ロードムービー」誕生への萌芽でもあった。

単に、ロードムービーに欠かせぬ「道路」が出てこないだけだ。もっと言い切ってしまえば「ロードムービー」なんて物は、しょせん日本なら桃太郎だとか、おとぎ話や民話の時代から在る「冒険記」という "鉄板ネタ"カテゴリーの一部に過ぎない。

で、1971年──かの『地球最後の男 オメガマン』で、ついに「道路」が舞台の「ディザスター系ロードムービー」が芽吹く。宇宙の果てや人体内部じゃなく、身近な地上に等身大のディザスター世界が構築され、そこを道すがらサバイバルする映画の到来!

本作もその、先陣を切って登場した「70年代ディザスター系ロードムービー」作品群の1本だ。『マッドマックス』や『ターミネーター』などを経て、これらの胞子はハリウッド近作映画の『ゾンビランド』『2012』『トランスフォーマー』『メイズランナー』などなど数多ある、彩とりどりの派生形へと裾野を拡げてゆくことになる。
 
 
そうなった今、本作を観返せば「なあんだ、掃いて捨てるほど観たよなディザスター系ロードムービーだな。いかにも!な無理くり展開だらけで、つまらんっ★」
 
 
…となる。粗っぽくて薄っぺらで、雑な脚本だなァ^^; とさえ思う。そう思えたとして、当たり前の話である。
 
 
なぜって、それら「掃いて捨てるほど観てきただろうディザスター系ロードムービー」全作品を紡ぎ上げてきた最初の原点のひとつこそ、この映画だからだ。


【追記】ただ、200%わたしが本作に心酔してるワケでもない。その点だけは誤解されぬよう、マイナス1.2点の減点理由を↓二つ掲げておく。
 ①1974年のパニック映画『大地震』でも さんざ言われたことだが、どんなに大都市が崩壊しても、クルマが走れる燃料と道だけは必ず残される、という空虚な確信の愚かさよ。
 ②『トータルフィアーズ』等々、アメリカ映画の核汚染描写はヒロシマの百分の一のリアルも描けておらず、甘ったれてる。そんな"楽々と"人が食いつなげる世界である訳がない。