あかつか

ミニマリズム: 本当に大切なもののあかつかのレビュー・感想・評価

3.5
1000冊の本を持っているのと、1000冊の電子書籍をタブレットにインプットしてるのとでは、どっちがミニマリストなのか?などと意地悪く考えちゃいがちだけど、何かと何かを比べてるうちはミニマリストにはなれないのかも。

登場する社会学者曰く、我々は物に支配されてはいるけど、「十分に唯物主義ではない」と言う。え、そうなの?「唯物主義はもっと商品を吟味する」。なるほどね。

脅迫的な消費観念が横行する今の世の中は、4シーズンではなく、52シーズンあるのだという。つまり、一週間ごとに服を買い替える。服飾店は一週間前にできた売れ残りの「古い服」を売ったり着たりできないよう裁断して廃棄するとか。マジか。そんなことしてるからアラル海が干上がるんじゃねーか。

プロジェクト333。3ヶ月で服(下着や靴、アクセサリー含む)を33個で済ませるチャレンジ。これは楽勝だな。自慢じゃないけどプロジェクト1210でもイケると思う。そもそも私と彼らではもともと持ってる量が比較にならない。さぞかしアメリカンサイズなんだろうな。

彼らよりモノを持ってない人をいくらでも知っているが、何が違うのかというと、結局貧乏くさくないところがポイント。成功した人ばっかだから、どこまでもインテリでリッチっぽい。「持てないから持ってない」のではなく、「持てるけどあえて持たない」が滲み出てる。新しい金持ち像だと思うのは、貧乏人のひがみか。でも金持ちじゃないとミニマリストを名乗っちゃいけない気はするよな。

タワマンに高級車みたいな金持ち像はもう古臭い。他者の欲望にまみれた生活を送るでもなく、ヒッピーみたいに資本主義経済に抗うでもなく、どこまでも基準は「私」にある。そのへんがウケるんだろう。

ミニマリズムなんて言葉が流行る前から、鶴見済は『脱資本主義宣言』を書いてた。このドキュメンタリーに出てる人は、肉親を亡くしたり、病気になったりしたことをきっかけにミニマリズムに舵を切ったが、鶴見済は最初っからミニマリストだった気がする。環境問題に絡めてだったけど、本質は同じじゃないかな。

「空間を埋めるために、生活に不必要なガラクタを買う」というセリフのときにセグウェイの通販番組流すの笑った。

あと、テレビ番組の女性司会者が「マキシマリストと恋におちたらどうすんの?」と質問するシーンとか、「子どもがいたらミニマリズムはムリなんてのは誤解さ」とか、面白い話はいくつかあって、思想的にはもちろん賛同するんだけどイマイチ実践的ではない。流行り言葉で言うと「あなたの感想ですよね?」。

そもそも買ったぶんだけ捨てていかないと、いずれモノが溢れますよーなんてことは小学生でもわかる。ひとつひとつの家の話でなくて、ひとつひとつの街や国家の話でもある。


つーか、こないだ見たこれの続編『今求められるミニマリズム』ってなんだったんだろう。なぜあれを作った。あれこそ生活に不必要な一本だった。。
あかつか

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