蛇らい

きみの鳥はうたえるの蛇らいのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.3
これまた、後からじわじわくる系。函館に暮らす若者たちの鬱憤が画面を越えて劇場に蔓延していた。
地方都市でただなんとなく、どこにも行けず、何にもなれない生活が、自分たちの命を少しずつ削っていくさまにヒリヒリさせられる。

街を徘徊する三人のシーンがとてもエモーショナルに描かれていて、函館のストリートの魅力が伝わってきた。いわゆる観光的ではない、住宅地や歓楽街を取り巻く日常の気だるさが、この映画の味わいの軸になっている。自分たちが暮らしている都市と映画の中の函館という街を比べて、何気ない瞬間や場所にちょっとしたアイデンティティが根付いていることに気づけると自分の暮らしている街に優越感が芽生える。

人間の仕草を切り取るのもうまい。うまく閉まらなかった冷蔵庫の扉をもう一度閉め直したり、借りたTシャツを匂ってみたり、花を空き瓶に生けたりする。そんな見過ごしてしまう、けれど美しい生活の機敏を大事にしていると感じた。随所でみられる三人のアドリブっぽい演技が現実と虚構の境目を曖昧にさせていたのもよかった。

一番笑ったのは、僕が殴られて「えっ?痛え...何これ?」っていうシーン。
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