亘さん

マザー!の亘さんのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

本来なら1月19日に公開されていたんだけど、何の理由もなく一方的に公開中止を告げられてがっかりしていたので、スペインからソフトを買い見て納得。これは日本公開難しいと思った。そんな曰く付きの作品ではあるけど、これまで色んなホラー映画を見てきたつもりだったのに、初めて目を覆ってしまった作品だった。こんなに美しくておぞましい映画がかつてあっただろうか?

どこかの郊外、ど田舎の草原に建つ8角形の形をした奇妙な家。ここにはある夫婦が住んでいる。夫(ハビエル・バルデム)は初老をとうに過ぎた過去には人気のあった偉大な詩人で創作活動をしているが、長くスランプ状態が続いている。
年の離れた若い妻(ジェニファー・ローレンス)は一度火事で焼失した家を作り直している。夫婦関係はどこかぎこちない。
そこへ見知らぬ老齢の男性(エド・ハリス)が現れる。夫は見知らぬ客人を泊めてもてなそうとするが、どこかおかしい。男性は脇腹に大きな傷があり、トイレで吐いた後便器の中には何か奇妙な生き物がいた。
翌日男性の妻だといういけすかない中年女性が来る。その翌日は夫婦の息子たちがやってきて兄弟喧嘩の末に兄が弟を殺す。しかし夫はあまり気にしていない様子。一体何が起きているのか。

何故次々と知らない人間がこの家にやってきては好き勝手にするのか。何故夫はそれを何も思わないのか。事態が進むにつれ状況は悪化する。そして妻の妊娠。
途中までは『プロジェクトX』みたいな感じで「これは意に反するSNS拡散を揶揄したものかと思いきや、最後の最後でキリスト教のメタファーだらけだった事に気がつく。
妻・家=地球(母なる大地という意味で)
夫=神
夫の書いてる詩=聖書
子供=キリスト
最初の訪問者の男=失楽園後のアダム
その妻=アダムの肋骨から生まれた女
夫婦の息子たち=カインとアベル
家に上がり込む人間達=自然に無遠慮で人口過多になった人類
妻が子供を産んでから届けられる荷物=東方の三博士からの贈り物

特に地下室にある血を吐くボイラーはマリアの心臓そのものだ。宗教画でよく見る「マリアの心臓」を表している。噴きあげる炎、流れる血の絵で、キリスト教の予備知識がないとピンとこないだろう。
http://antiquesanastasia.com/religion/images_pieuses/francais/canivets/vierge/coeur_immacule_de_marie/bouasse-lebel/760_sacres_coeurs_de_jesus_et_marie/devotion_speciale.html

焼け焦げた妻が
妻「あなたは誰なの?」
夫「私は私だ」
妻「私はあなたを満たすことが出来なかった」
夫「また初めから創り直せばいい」
妻「もう死なせて欲しい」
夫「まだ愛が残っている。それが欲しい」
妻「あげるわ」
そういうと夫は妻の胸に手を突っ込んで心臓を取り出す、その瞬間に妻は灰になって妻の心臓は美しいクリスタルに変化する。
笑いながらそのクリスタルを焼けた家に飾ると全てが最初のシーンに戻っていく。
ゾっとして吐き気を覚えた。地球も人間も本当はこの世には存在しなくていいのかもしれない。だけど神はすべてを投げ打って神を愛する存在が必要なのだ。その為に神は何度も人間を地球を許し作り直してきた。神の永久に満たされない自己満足の為に。
もしかして深読みしすぎて「これはただのある男(または女)の妄想の話だよ」と言われたらそうかもしれないけど、自分が12時間の間に2回も見て感じた事が上記だった為に完全に打ちのめされてしまった。
これまで全てのアロノフスキー作品は見てきたけど、全部救いがない。今作に関しては神のアイデンティティに迫っているのは驚愕したけど、はっきり言ってめちゃくちゃ胸糞悪いのが最高でした。疲れたw
亘さん

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