フジタジュンコ

ハウス・ジャック・ビルトのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.4
"芸術家"たるラース・フォン・トリアーによる、おのれの魂を慰める、カンヌへの復讐譚。

殺人鬼ジャックの言葉はトリアー自身の言葉であるし、地獄の案内人・ヴァージとのやりとりはこれまでの彼の創作に関する解説である。
もうこっちは、トリアーが偏執狂で神経質でサイコパスで人の気持がわからなくてでも気が弱くてディスコミュニケーションばっかりでもうなんかつらくってママンにすがりつきたいのも、全部わかってるから、そんなに頑張って自分、芸術家です!自分、めっちゃ崇高な目的のために人を不愉快にする作品ばっかり撮ってます!!って語らなくてもいいのになあと思いながら見てました。

とはいえ、ただの自己投影に終わらないのがトリアーのいいところ(悪いところ?)か。
5つのエピソードとエピローグからなる本作は、「ブラックコメディ」にカテゴライズしてもいいほどユーモアたっぷり。ひとつめの出来事から「ジャッキが壊れている=ジャックが壊れている」という指摘もあって、だとするとすべて妄想・幻想のようでめまいがしてくる。ジャックが本当に建てたかった家すら不格好で出来が悪い。
やたらと美しいエピローグの映像もどこかコミカルで、エンディングのレイ・チャールズ”Hit the Road Jack”(出て行ってジャック)には歌詞を二度見しました。

ちなみにですが、「メランコリア」、「アンチクライスト」をはじめ、トリアー作品に出てくるお子さんはめちゃくちゃ愛らしいのだが、本作に登場する子供たちもとっても可愛い。しっかり残酷シーンに登場するので、ちゃんとケアされているのかが気になってしまった。