けまろう

ゆれる人魚のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『ゆれる人魚』鑑賞。「初恋は、残酷な味がする。」という個人的なフェチドンピシャの映画。ダークファンタジーミュージックという触れ込みの通り、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を彷彿とさせる静謐で退廃的な空気が全体を支配している。原題"Corki dancingu"は「踊る娘」という意味で、英題も"The Lure"で「誘惑」だし、邦題含めて意味が全くバラバラ。でも、どれも正しいというのがまた興味深い。
ポーランド語の原題通り、物語は踊ることに満ちている。アングラなナイトクラブでは、ストリップ染みたショーが繰り広げられて、人魚の姉妹もそこで踊り人気を博す。そして、姉のシルバーは消えゆくまで船上でスローダンスを繰り広げる。それに、彼女たちを陸に上がらせたのは、陸上での恋人が欲しいという誘惑であり、実際にシルバーはそのルアーに引っかかり命を落としてしまう。邦題は邦題でとても良く、揺れるようなダンスを示唆しつつ、本来餌である人間の男に恋をしてしまうことの心の葛藤も表現している。
人魚姫の物語を意識している一方、姉妹という設定でより深みを持たせている。それは恋を選んだ姉シルバーと人魚として生きることを選んだ妹とゴールデンという退避構造によるものだ。恋を選んだシルバーは、移植された両脚で身体の自由を失い、踊れなくなったことで仕事も失い、ポッと出の人間の女に最愛の人も奪われてしまう。結局、恋を選ばなかった妹のゴールデンが故郷の海へと帰っていく。まるで、女性は恋をしない方が幸せになれるとでも言わんばかりのメッセージだ。ネーミングも、敢えて妹にゴールデンと付けている辺りに狙いを感じる。
エンドロールで貴方の腕の中よりも海の方が暖かいわ、という歌詞がとても胸に響いた。男性悪!
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