クリーム

赤線地帯のクリームのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
3.8
売春防止法が国会で審議されている最中の吉原赤線地帯で働く女性達を描いた群像劇。中年の女性やまだ少女の様な娘までが、そこで働くしかない当時の女性の働き口の少なさが伺えます。時折流れるちょっと不気味なテルミンの音色が、女性達の心や時代の雰囲気と合っていたと思います。地味な作品だけど、興味深かったです。

やすみは、父の保釈金を稼ぐ為、吉原で働き、したたかに金を貯めている。ミッキーは、父に反発し娼婦になった。ゆめ子は、田舎の義理親や息子の為に働き、息子との生活を夢みていた。ハナエは、病気で働けない夫と子供の為に働く。より江は、嫁に憧れ嫁いだものの生活が合わず、この商売の良さに気付き戻った。そんな彼女達の日常も売春禁止法案のせいで、稼ぎが減って来ていた。



ネタバレ↓



ミッキーは、父が世間体の為、彼女を迎えに来たが帰る事を拒否し、ハナエの夫は、絶望し自殺未遂(死ねば良かったのに)。こいつは、自分が食わせて貰ってるクセにより江を見送る時に「2度と戻ってくるな、あんな所で働いているのは人間のクズだ!」と当人達の前で熱弁した最低男。
息子の為働いて来た、ゆめ子だったが息子は母を売春婦だと恥じ、一緒に住む事や会う事を拒絶した。ショックのあまり、彼女は狂ってしまい精神病院へ行ってしまった。
やすみは、結婚を匂わせ、男から金を引き出す。男は店の金を横領した為、返せと揉み合いの据え、やすみは救急車騒ぎ。彼女の常客だった男の布団屋を乗っ取り、荒稼ぎしたお金で事業を始めた。
新たに入った若い娘は、田舎の両親が金を欲しがっている為、店に立つ事になり身支度をし、見よう見まねで、客に声を掛けようとする。おしまい。
この時点で、売春禁止法案は可決しなかった。
が、1956年に売春禁止法が制定され、 1958年から適用、赤線は廃止に。

思っていたより、普通の女性達が仕事をしていて、金に困った女性達は吉原で働くしかない時代だった。勿論、悲しい背景があるもののより江が、自分で働き自由な生活を選んだ事は興味深かったです。自分で稼げる数少ない女性達が、この辺りから目覚めて行ったのだろうと思いました。また、男性社会で成功するには、強くしたたかでなければ無理だったのもやすみを通して見えました。当時の様子が伺える面白い作品でした。

*MAAAAAさん、ありがとう♡
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