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アトミック・ブロンドのKuutaのレビュー・感想・評価

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)
4.1
自分の80年代音楽へのリテラシーの無さゆえに何となく敬遠してましたが、本年度暫定の個人的NO.1作品となりました。音楽ネタが分からなくても試して大正解でした。

やはり話運びの拙さが目立つのと、回想方式を取るならもう少し粋な演出を入れて欲しかったとは思います。フィルムが焼ける、みたいなメタな見せ方や、叙述トリック的な嘘がもう少しあっても。

兎にも角にも、シャーリーズセロンの肉体美とアクションのための映画。氷風呂から出た最初の背中のショットで完全にやられ、あとはひたすら眼福でした。あの時点でピンとこない人には合わない作品かもしれない…。色んな衣装に色んな武器。フェティッシュ。

重々しく、痛々しく、アイデアいっぱいの格闘。癖のあるキャラクター。作り込んだ映像。冷戦構造にどっぷりと浸かり、時代に翻弄されたスパイたち。

色仕掛けとか、決め絵のためのハイキックとか、女スパイにありがちな描写を一切廃して、ハイテクなスパイ道具も出さず、ストイックにリアリティを突き詰めた結果、女性のアクション映画として出色の出来になっていると思うし、あの御託抜きの濡れ場を見ていても、こういうのがポリコレって言うんじゃないかなとも思いました。

主人公が男だったら間違いなく成立していない映画ですし、上辺だけのお説教や配役での目配せでなく、作劇上の必然からフェミニズム的テーマが導出されるって、スマートだなと。ある意味怒りのデスロードに近いものを感じました。

シャーリーズセロンが良すぎて、マカヴォイもソフィア・ブテラも押され気味だった印象ではあります。例えば007は、007という理念さえ継承すれば続編が作れますが、今作はシャーリーズセロンという女優の今の存在感ありきの作りなので、続編は難しい気がします。そういう意味でも、今見てこその作品です。82点。
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