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ナショナル・シアター・ライヴ 2017 「深く青い海」のTOTのレビュー・感想・評価

4.1
激しい季節が終わる一日。
今まで観たNT Live作品な中で四番目くらいに好き。

戦後、元空軍パイロットと駆け落ちした主人公へスターが住むアパートの舞台装置は、薄布のように透過する壁と扉、窓から差し込む外光が室内につくる陰影が美しく、深く深く沈む海の底のような静けさと寂しさ。
また、隣人の監視も表しながら、実際はへスターを外界から守り、彼女の新生を待って優しく包む薄膜、繭のようにも見えた。

男性の庇護でも依存するでもなく、自分が何を求め何者であろうとするか。
離婚して新たな愛に苦しみ、絵画制作に生き方を見出そうとするへスターの姿は痛ましくもあるけど、彼女の七転八倒は戯曲の時代を越えて、年齢も関係なく、私に響きました。
ラストの彼女のたくましさ!
彼女の赤毛が薄ブルーの壁に映えて美しい。
また、画面の端に人物を配置するカメラの絵画的で美しいこと!
ミラー医師の台詞が素敵だったので戯曲そのものも読みたくなった。探そ。
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