ドント

ワイルド・スピード/ファイヤーブーストのドントのレビュー・感想・評価

4.2
 2023年。どうかしてますよ。泥棒からはじまり世界を救いに宇宙まで飛び出したワイスピ、ついに最終章突入の前編。ことあるごとに「ファミリー……」とか言ってたドミニクたちの前に「俺はお前らにそのファミリーを奪われたんだが?」と復讐鬼と化したキャピキャピ・クレイジー・髭おじさんが出現、仲間やバックアップから切り離され孤独な戦いを強いられるドミニクたちに勝機はあるのか!
「仲間を分断させ潰していくのが狙い」の敵であるからして、これまでの「仲間と共に戦うぜ!」というチームプレイが行われない作劇は正しいとも言えるがそれにしたって3つか4つの別の場所での物語が有機的に絡むでもなく東西南北に向かって疾走していく作りには度肝を抜かれるというか、全然別の車種の部品を組み合わせているのに「車です! 新しいスーパーカーです!」と言い張っているような凄味を感じる。
 後出し設定はともかく敵のジェイソン・モモアがとにかく「そう来ると思っていたので仕掛けておいたのだわ!」と未来予知でもできるんじゃねぇかというくらいに先&先を読んでいたりする。かと思えば「敵の敵は味方」な番長イズムが発揮されたと思ったら結局殴り合いを挟んだり、そんなちっちゃい傷にそんなスーパーメカを? その空中モニタはなんか安すぎないか? などと少しでも冷静になると「ん? んっ?」と感じてしまうところが多々見受けられる。
 とは言うものの本作その辺は自覚的らしく、「少しでも冷静にな」らせないためにとにかくアクションが繰り出され続ける。ローマたま転がし祭り、叔父による家破壊バトル、因縁晴らしのステゴロ、因縁はさておき敵が来たのでふたりで殴る、ワイスピ名物カーレース、爆発、銃撃戦、爆発、自由落下着陸、爆発、爆発、爆発、大爆発、直角川下り、爆発……。ドラマはそこそこに破壊がバンボンと炸裂していく。異常圧力と言う他ない。
 前後編でシリーズ完結と言っているもののクリフハンガー、宙吊りになっている議案が多すぎてあと一本で終わるのか、いや整合性がとれるのか? と観客の身ながら心配になる大風呂敷の広げぶり、しかしその大風呂敷もこれまでのシリーズがあったから広げられるわけで、畳めるかどうかはさておき「畳もうとしている」、つまり終わらせようとしている雰囲気は漂っており、あの人やあの人の登場も大団円へ向けての準備といった空気がある。
 かすかに寂しくもある、と書こうと思ってたら主演のヤツが「いやぁ三部作にしたらどうかなぁ~って」と言いはじめているらしい。もう好きにしなさい。どんな危機もスッ……となったらサッ……と消えてれば脱したことになるし。スピンオフとかもやるんでしょ。もはや何でもアリ極まれりですよ。でもキャストとスタッフは、みんな仲良くするんやで。体を大事にするんやぞ。そして、祭りはまだまだ続く。なお本作のMVPはジェイソン・モモアにあげたい。
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