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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のFrafillのレビュー・感想・評価

4.0
試写会後に、ハリー杉山氏、木畑洋一氏のトークショーがあった。

■他のレビューされている方々と同じく、ゲイリー・オールドマン氏の迫真の演技力と、辻一弘氏をはじめとする製作陣の技術には、全編を通してただただ圧倒されるばかりであったが

何よりも、この映画を観たことで、当時の時代をより知り、そして改めて深く考えるきっかけを持てたことが自分にとっては大きかった。

例えば、アメリカは最初からイギリスに協力的ではなかったということ。「馬で戦艦取りにこい」ってww

また、「ダンケルク」と同じ時間を描いているということは聞いていたが「英国王のスピーチ」とも深い関係があったとは…観たはずなのにすっかり忘れていた。もう一度観返したい。

■チャーチルが地下鉄で市民とやり取りするシーンも感動的ですごく好きだったが

一番心に残ったのは、チャーチルが若者たちを集めて、言葉巧みに問いかけ、鼓舞するシーンだ。「イギリスの国土に、ナチのマークが掲げられてもいいのか?」と。never!no!と若者たちは口を揃える。

私はそのシーンを観て、思わず今の日本と対比して考えてしまった。もしこれと同じ状態に陥った時、その時日本の若者は何と答えるだろうか。少し背筋に寒気が走った。

イギリスは、戦争に勝った。
日本は、戦争に負けた。

日本は、アメリカ軍基地が国内に配置されることを許している。日本の国民性もあるのかも知れないが、それを疑問に思っている若者が、どれだけいるだろうか。少なくとも私は当たり前、仕方のないこと、としか考えていなかった。というか、深く考えたことがなかった。

ブレグジットに象徴されるように、周りに流されずはっきりと意見を言うイギリス。
絶対にアメリカにNOと言えない日本。
どちらがいいのかはわからないが、二つの国が、全く正反対の歴史を辿ってきたということをはっきり理解した。戦争とは、これほどまでに一国の運命を左右するのか。

■ハリー杉山氏の話を聞いていると、チャーチルの存在はイギリス国民の心の奥深くに根付いているのだということがよく分かった。イギリスの赤ちゃんはみなチャーチルに似ているらしい(笑)。チャーチルは、日本の坂本龍馬みたいな存在なのかも知れない。彼がいなかったら、イギリスだけでなく、ヨーロッパが、世界が、今とはかなり違ったものになっていただろう。

杉山氏によると、チャーチルは非常にアイコニックな存在であったという。トレードマークの葉巻やファッショナブルなネクタイ、Vサイン…。自身と自身の党をブランド化し巧みな話術で若者を取り込んだヒトラーが、彼を恐れたというのも頷ける。

■全体的な印象としては、英語版の副題「Darkest Hours」の通り、暗く、淡々とした時間が流れていく。はじめの頃は斜め後ろの席でお休みの音が聞こえた…。人によっては、前半は単調に感じるかも知れない。
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