チャーチルの首相就任前日からダンケルクの戦いあたりまでという“Darkest Hour”の中でも極めて短い期間を歴史から切り取り、様々な人物の内外に光を当てながら丹念に丁寧に描いた佳品。特殊メイクを別にしても、チャーチルの滑舌の悪さやガサツさ、歩き方など、他作品のゲイリーとは全く違う立ち居振る舞いは流石。チャーチルや国王(チャーチルだけでなく、この人もかなり実物に近い見た目)は史実通りのヘビースモーカーぶりを作中で見せているのだが、エンドロールの終わり付近には「この映画には喫煙を助長する意図はなく云々」という英語の文言がきっちり入っていて苦笑。
他国からの干渉断固拒否！な姿勢は確かに格好いいがその後の歴史を思うと、その英米に干渉された結果洋服を着て英語勉強してこれを観に来ている我々は…などと、あくまで映画とはいえ複雑な気持ちになったりもした(これも映画の出来が良いゆえだろうけれども)。他の敗戦国での反応も少し気になる。
