けんぼー

孤狼の血のけんぼーのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
3.9
2021年鑑賞104本目。
東映イズム、仁義なき戦いイズムを感じる作品。「正しさ」とは何か。ヤクザと警察の三つ巴の血生臭い戦い。

昔の東映ロゴから始まり、「仁義なき戦い」オマージュとも取れるナレーションシーン。「仁義なき」ファンの一人としてはこの時点でアガる。
そして劇中で飛び交う銃弾と広島弁。いいっすね。
あと、メインテーマがかっこいい!これは最高です。

ヤクザもので「仁義なき」に寄せている演出ではあるものの、ただの「仁義なき」シリーズの現代版焼き直しというわけではなく、ヤクザ同士の抗争に警察が絡むことでより複雑な作品になっており、人間ドラマも重厚でよりエモーショナルな仕上がりになっている。
本作は素晴らしいと思うが、完全に好みの問題なんだけど、私個人としては「仁義なき戦い」の方が好きかなあ。

「仁義なき」オマージュのナレーションシーンの写真が「いかにも」なものが多くて、ちょっと笑ってしまった。警察に連行されている所の写真が特に「いかにも抵抗してます」みたいな感じがわざとらしい。もっとフツーに撮った写真でよかったと思う。

現在公開中の「LEVEL2」の予告を先に見てからの鑑賞だったので、「松坂桃李」の印象が全然違うくて驚いた。予告の方では髭にグラサンでワイルドな印象だったので、本作は彼がそのようになるまでの話なんだと思うと興味が湧いたし、本作のラストを見て納得した。

そんな松坂桃李演じる新米刑事「日岡」の先輩にあたる主人公「大上」の存在感が凄まじい。「孤狼の血」と言ったら「大上」というイメージになるほどの強烈に印象に残るキャラクターです。そしてそれを見事に演じ切った「役所広司」の凄みも再認識できる。オーラまで演じて醸し出すことができるまさに名優。

この作品が投げかけているのは「正しさとは何か」ってことだと思いました。
ヤクザ同士の抗争を止めるために手段を選ばない大上だが、彼は本当に「正義」なのか。大神の行動に矛盾を感じる日岡と一緒に観客も考え、悩み、そして終盤で感情が溢れ出す。

東映イズムを継承するヤクザ映画の代表作だと思います。

2021/8/31鑑賞