もこもも

人生はシネマティック!のもこもものレビュー・感想・評価

人生はシネマティック!(2016年製作の映画)
4.4
第2次大戦下のロンドンを舞台に激動の時代を生きる苦難と戦いながら映画制作に尽力する1人の女性脚本家を描いた作品

あまりにも素晴らしい...
ほんま"映画"って素敵やね
また一つ映画が好きになる、
心から出会えて良かった作品

戦争や男性と女性の立場の違いなど時代による困難と向き合いながいい映画を作るために努力する姿に大きな感動を抱くし、タイトルでもあるように人生は映画のように、映画は人生のように、人生と映画の魅力が交錯するストーリー展開も魅了される
戦争や映画や愛がテーマになっていることといい、作品の中の映像で大きな感動を与えてくれることといい大好きな『ニュー・シネマ・パラダイス』と重なる部分も多かった

"時代による苦難"
戦争はやっぱり1番大きな苦難
この作品では戦地に赴いている人ではなく
戦争に行っている人の帰りをロンドンで待つ女性やお年寄りや負傷者の人生が描かれている
いつ死んでもおかしくない危険と隣り合わせで、それが日常だったことに悲しみと苦しみを感じた
こんな時代だからこそ「明日をも知れぬ命よ、時間を無駄にしないで」の言葉が胸に響く

男性と女性の立場の違い
この作品ではそんなに男尊女卑が主張されているわけではなかったけど会話の節々から女性への尊敬が欠けている部分は感じる
男性と女性で給料が違うことは当たり前で既婚女性だとさらに給料が減ることに驚かされた
自分がもしこの時代に生きていたら一体どういう考えを持っていたのだろうって考えてしまう

"映画への情熱"
最初は生活できるお金を稼ぐっていうのが1番の目的やったけどバックリーと働く中でいい作品を作りたいことが1番の目的になり奮闘するカトリン
厳しくて悲観的やけどいい映画を作りたい情熱は本物でその情熱とユーモアがカッコいいバックリー
この2人が皮肉を言い合いながらもどんどんいい作品が出来上がっていく姿は観ていてほっこりする

「映画は最高だった
 たまには価値ある映画を作りたい
 人生の1時間半を捧げたくなる映画を...」

"人と人の大切な想い"
頑固で自己中なお爺さんのヒルアードをはじめフィルも他のスタッフたちもみんな素敵な人で、この人たちが制作する作品はいい作品になるだろうなって感じさせてくれる
それぞれが大切な人を失う経験をして痛みを知るからこそ、知ろうとするからこそ本当の優しさが出てくるんだろうなって

カトリンとバックリーが愛おしい...
厳しいことを言うけどカトリンの実力は最初から認めていて、いい作品を作る為に一緒に尽力して仲が深まっていく姿は胸が温まったし、フィルの言葉で気付かされたカトリンがバックリーから告白された時の後悔を文章という形で取り戻すところはロマンチックで、2人のキスシーンは最高に嬉しかった

そして悲劇はその直後に起こる...
甚大な空襲の被害で撮影を行う建物も不安定になってことにより大きなセットの下敷きになってしまいバックリーは死んでしまう
ようやく素直な気持ちを伝えたのに...
ようやく2人が結ばれたのに...
あまりに突然な別れにカトリンと同様言葉も思考も止まって絶望が重くのしかかった...
だからカタリナに「いい仕事してるよ、君の方が連中より優秀だ、最近切れ味良いな」と語りかける亡きバックリーの姿でようやく状況が感情に追いついて涙が溢れた

「死に意味はないよ
 なぜ人は映画が好きか?
 構成されているからさ
 ストーリーには形、目的、意味がある
 不幸な展開も作為的で意味がある
 人生とは違う...」

"涙が溢れるラストシーン"
脚本家を辞めて制作した映画の公開も観ていなかったカトリンはヒルアードの大切なことに気付してくれる言葉を受けて映画館で自分の作品を観る...
勇気を出して困難に立ち向かう主人公の双子の姉妹とカトリンの姿を重ねていることも、例え死んでもその存在は無意味ではなく大切なものとして残り続けるというメッセージにも、観客みんなが喜怒哀楽して最後には涙する映画の素晴らしさが詰まっていることにも感極まって号泣した
ポテトを投げるシーンは大好きやったからそこが映画の最後に流れていることにも大号泣

ラストはバックリーの想いを継いで脚本家として働くカトリンのシーンで物語は締め括られる
脚本家としてのカトリンの姿とフィルとの「ハッピーエンドにね!/分かってるわ!」の会話も前向きになれて素敵
映画の途中で双子役の姉妹が歌ってたEDの『They Can't Black Out The Moon』が大好き
愛する人を失う悲しさだけではなくてその存在を糧に、その想いを胸に、前に進んでいく力強さを感じる作品

「見た瞬間 それが欲しいと思い
 どんなに強く望んでも
 手に入らないものはあるか?

 俺にはある
 それは生きる力を奪うか
 燃え続ける炎を与えるかだ

 俺は出だしにいなかった
 だが結末は必ず見届ける
 正しい結末にすべきだからだ
 戦う価値のあるような結末に...」
もこもも

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