このレビューはネタバレを含みます
【損はない】
我が家の弐番館下高井戸シネマにまたまたお世話に。それほど昨秋あたりから年初にかけては取りこぼしが多かった。
とはいえ、こちらは最近知ったもの。先日予告編を見て、面白そう!と思った作品。邦題で分かるように映画にまつわるお話。
舞台は1940年代のロンドン。第二次世界大戦が激化する最中のイギリスの映画界のドタバタを、一人の女性脚本家の視点で描いたコメディタッチの作品だ。
国民を鼓舞するために戦意高揚映画(=プロパガンダ映画)を製作するよう政府から映画界に横槍が入る世相の中で、新米脚本家となったヒロインが奮闘し、やがて素晴らしい作品を作り上げるというのが大筋。
政府の横槍、ベテラン俳優の横暴、当時の映画のノウハウなど裏話が面白おかしく散りばめられ、笑いあり涙ありの展開は、予想通りだった。悪くはない。
ただ、そこにロマンスや、けっこうリアルな戦時中の悲劇が折り込まれ、欲張りすぎた感がある。もう少しスリムにテーマを絞れたら、もっと良い作品になったかな。惜しい。
ヒロイン(ジェマ・アータートン)の相手役を務めたサム・クラフリン(脚本家の同僚でもある)が、再三こう言ってダメ出しをする。
「長すぎる。半分に削れ!」
「どこを?!」とヒロイン。
「余分なところだ!」
この台詞、本作の監督、脚本家に言いたいかな。
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(ネタバレ、含む)
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昨年『ダンケルク』は観ておいて良かった。この作品でも扱われており、英国人にはほとんど常識的な戦争の逸話であるためサラっと語られるけど、『ダンケルク』を観てないと、よく分からないところもあったかもしれない。
俳優陣の演技は良かったね。ベテラン俳優役のビル・ナイも、落ち目なくせにプライドが高いというステレオタイプの往年のスター俳優を、まさに!という感じで演じていた。その彼がだんだん味わい深く良い人になっていくのもホロっとさせられる。
レイチェル・スターリングが演じた役もいい。最初、ヒロインに冷たく当たる事務方の同僚の役なのだけど、製作を通じ理解者となっていくところが良い。最後の台詞が特にいい。「次の作品もハッピーエンドにね」(make it Happy End!)と。映画の肝は「”信憑性”と”楽観”」。これ、作品冒頭から何度か出てくる言葉だけど(誰かの箴言か、英国映画界の金言・お題目か)、やはりリアリティがありつつも、夢を描いたものがいいよね。
また、女性同士の結束、女性が社会の中で地位を獲得していく流れが、ちょっと『ドリーム』も彷彿させていい感じ。監督も女性なんだよね。なんとなく、女性へのエールを強く感じた作品だったかな。
とまぁ、ベタで、お約束なところも多く、お涙頂戴な感も否めないけど、『キネマの天地』や『ニュー・シネマパラダイス』的でもあり、女性の初脚本がひとつの作品になっていくドタバタ感は『ラジオの時間』っぽくもある。女性の頑張りを描くところが『ドリーム』でもあり、『ダンケルク』な戦争のリアルさも描きぃの、更にはそこにラブ・ロマンスも盛り込み・・・、とまあ、要は欲張りすぎな作品ではあるけど、映画好きなら、観ておいて損はないかな。
ちなみに今日は、奥さんの下高井戸シネマ会員の年度更新をしての招待券での鑑賞。損もなにもないんだけどね(むしろ得・笑)