こ

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生のこのレビュー・感想・評価

3.7
視覚を95%失った男性が、五ツ星ホテルで働くという夢に挑む話。

終始ずっと無理無茶の連続であったから、これが実話だと知った時にはただただ驚いた。日常生活でさえ苦労を要する状態で、仕事のバリエーションの多いホテルスタッフという立場で屈強に挑戦し続けたサリーの強さをひしひしと感じる。

視覚の欠如というハンデを背負いながら、暗記能力や聴覚、場をやり過ごす臨機応変な対応力など人並外れた才能やそこに努力も加えて、夢を諦めまいと必死に模索していく姿、やり方は変えるが目標は変えるまいというそのひたむきさは様々な人間に生きる希望を与えるだろう。

「幸福への道など存在しない。道こそが幸福だから。」ブッダの一節が非常にマッチして心に響く。人一倍険しい道をただ「成し遂げる」だけでなく、「楽しむ」ことをも諦めなかった。

ただホテルの仕事にて障害を乗り越えていくだけでなく、ドラッグにまみれて1度は再起不能になりかけるという若者らしいリアルな挫折も描かれており、どんなサクセスストーリーも、1度はとことん落ちるところまで落ち、腐り、廃人と紙一重となるのだというところも垣間見えた。

障害に関して、スタッフ達は寛容すぎでは…と思っていた矢先に給仕の鬼教官の登場は最高だった。網膜剥離の有無に関わらず、1人のスタッフとしてサリーを認め、彼に新たな道を提供しようとした時に感じた。序盤で「こんなん絶対無理だろ、危なっかしくて見てらんないなぁ笑」って考えながら見てた自分が、どこか悔しくなった。

何よりこの映画のもう1人の主人公といっても良いマックスの人柄が最高だった。親しい友が同じ網膜剥離を患ったとして、あそこまで他人の夢のために身を粉にして付き合いきれるだろうか。2人の主人公それぞれの視点から物語を考えると、障害を持った者とそれを支える者の模範的志しが描かれていると思う。
こ