回想シーンでご飯3杯いける

ソウルメイト/七月と安生の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)
4.2
5点満点を付けた「少年の君」のデレク・ツァン監督による作品。こっちの方が先に撮られたっぽいのだが、「少年の君」同様に物凄い熱量で、ラストシーンまでとことん引き込まれた。

2人の女性の、小学校時代から大人になるまで(20年間ぐらいだろうか)を描いた友情の物語で、当初は初々しい少女の話だったが、恋を知り、社会を知り、2人の生き方が別の道に分かれていく様子が残酷に描かれる。

中国の家父長制的な家族制度を背景にしながら、だからこそとも言うべきか、自由を求めて力強く生きる姿も、鮮烈に描かれる。

自由を求める安生(アンシェン)を演じるのは「少年の君」にも出ていたチョウ・ドンユイで、本作でも存在感抜群であるが、対して家父長制的な家族で育った七月(チーユエ)を演じるマー・スーチュンの演技も、本作には無くてはならない要素。母親から「どんな男と結ばれても、女の人生は辛いもの」と言って育てられた彼女の存在は、日本のベストセラー小説「傲慢と善良」の主人公、坂庭真実を思い起こさせる。

どんでん返しと伏線の回収が畳みかける終盤に、感情を大きく揺さぶられる。予定調和や共感を優先しない、あくまで作家としての熱量に主軸を置くのが、デレク・ツァン監督作品の魅力だ。