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ファースト・マンのkiritoのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.7
【足跡】

That's one small step for man, one giant leap for mankind.
自分の月に残った足跡を見たとき、アームストロングは何を想ったのだろう。

「ゼロ・グラビティ」「インターステラー」「オデッセイ」と近年宇宙を題材にした映画は多く撮られているところであるが、どちらかというと宇宙の全体的な綺麗さが楽しめた部分が多かったように思う。

本作は、宇宙の壮大さというよりも、宇宙飛行士としてのリアルさに主軸を置いているため、「宇宙の映像」を楽しみに映画をみると物足りなさを感じてしまうはずだ。

ガガーリンやアームストロングは学校の授業でも習うし、最低限の教養としての知識はあるが、長い間偉人であるのに描かれてこなかった側面もある。
本作はアームストロングの伝記映画であるが、これを撮影したのが「デイミアン・チャゼル」というのもまた感慨深い。
「セッション」や「ラ・ラ・ランド」とは全く異質の骨太映画であるが、「音」へのこだわりは強く感じられた。
特に、月のシーンは圧巻。多分監督が最も気を使ったシーンなのではないか。
ネタバレになってしまうので細かくは言えないが、このシーンは劇場で音を立てるやつは本当に周りの方に失礼なので、携帯電話・食べ物・ビニール袋等扱いには十分に注意したい。

140分と尺も長いことや、アームストロングの心情描写が少ないこと、話自体が淡々と進むことはまさに伝記映画といった感じだろう。例えばアームストロング(ゴズリング)のナレーションでもあればあるいは何か違うのかもしれないが、個人的にはあえてそういう部分はそぎ落としたのではないのかと思う。

さて、なんといっても僕が感動したのは監督が追及した「リアルさ」である。
例えば、カメラの回転から伝わる無重力空間とその衝撃(これ自体はほかの映画でも描かれている)が、自分もその場にいて回っているように感じるしそこには「死への恐怖」が隣接していた。
また、宇宙服の目の窓と宇宙船のガラスがそれぞれ曇っていて、思った以上にクリアに見えないということも学んだ(これは今までの映画と圧倒的に違う部分)。
一人称としての「宇宙飛行士」を疑似体験できたという点だけでもこの映画の真価は発揮されているように思う。

エンタメによっていないので面白くはないが、興味深い一品。

2019.2.13
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