彼女は路上を選んだ。その事をきっと後悔しているだろう。
アニエス・ヴァルダが金獅子賞を受賞し、また彼女の監督作の中で最高傑作とも評される、乾燥と冷たさを帯びた寡黙ではあるがそんなにいい奴でもない、人に例えればそんな感じの映画。
主人公モナが路上で野垂れ死ぬことが、あらかじめ決まっていると言うなかなかに攻めた(だが当時にしてみれば前例も結構ある衝撃度自体は低い)設定。
死に至るまでの数日間の足跡を、モナが接した人物らからの証言で以て辿るところにこそこの映画のイマジネーションは発揮されている。
その中で明らかになるのは、モナの人物像だが、これがハッキリ言って現実を知らず怠け者で無防備、意固地なくせにアカンタレで、秘書経験があるって言う自身の述懐から中途半端に学だけはある。
辟易するような屁理屈を、助けてくれる人に並べ立てては心を開こうとしないそんな女だ。
彼女の旅は、死への一本道を真っすぐ、ゆっくりと歩いているようにしか見えないが、善意を無碍にしなければその一本道から逸れ、運命を回避出来たであろうと言う場面も多くて、彼女への心証は終始悪い(不思議と多くの人が彼女に惹かれるのが正直不思議でならなかった)。
この作品の主題が、自由と孤独が表裏一体であることは作中でモロに語られていたから明白。
モナがそこに至るまでの過程はほとんど一切描かれず、どこまでも孤独を受容した結果として本作は呈示されているところに、凄まじい冷たさをやっぱり感じたわ。