えんさん

勝手にふるえてろのえんさんのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
3.5
絶滅動物をこよなく愛し、最近は手に入れたアンモナイトの化石に夢中の24歳OL・ヨシカ。彼女は恋愛未経験だったが、中学時代の同級生イチを思い出してはいつも胸をときめかせている。しかし、実際には彼氏がいたことのないヨシカは、普段から会社でヨシカに何かと絡んでくる同期のニに突然告白される。告白されて舞い上がった嬉しさはある反面、性格が真逆な二との関係に馴染めない彼女は、卒業以来会えていなかった今のイチに会おうと工作を始めるのだが。。芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を、「ちはやふる」の松岡茉優主演で実写化したラブコメディ。監督は「でーれーガールズ」の大九明子。

もはや絶滅した動物の存在を想像して愛してしまうほど、妄想超特急な女性を中心としたドタバタラブコメディ。綿矢りさの同名小説が原作ということですが、僕は彼女の芥川賞受賞作「蛇とピアス」を読ませていただいたとき、主人公カップルの痛いほどの愛情にビビッときた(残念ながら、映画化された作品は未見)覚えがあったので、本作がどのような形のラブドラマが展開されているのかがとっても興味がありました。「蛇〜」のほうは痛みなどの身体感覚的なところが追求されていましたが、本作はそれとは真逆な妄想の世界に浸る女性と、そこに登場する初恋の彼氏、そして今の彼女が好きなダサめな男性という3人の登場人物によるアベコベ三角関係物語。妄想ガールなヨシカという存在が、性別は違えど、自分にも共感するところが多くすごく前のめりに見入ってしまいました。

時期と場所を特定されるのが嫌なので(笑)、だいぶボカして書きます(まぁ、学生時代ですけど)が、僕の初恋も片想いでした。相手は隣のクラスで、授業でも、部活・サークル、バイト等々でも全く関わりもなく、正直喋ったことすらないのですが、やっぱり時々その人のことをヨシカと同様に脳内恋愛を今でもしてしまいます。。昔見た何かの映画で、余命わずかと分かった主人公が初恋の人に本当の想いを伝えに行くという場面があったりしましたが、恋愛関係は無理でも、知り合いになっとけばよかったとか、死ぬまでに想いを伝えておきたいという、傍目から見ると気持ち悪いことを今でも思ったりしますが、まぁ、話をしてみたら冷めてしまったかもしれないので、これは想い出としてとっておくほうがいいかなと今では思ったりします。こんな風に、人を好きになるという感情は本当にめんどくさい。そこを突き詰めると、やっぱり人と関わって傷つくよりは、自分の好きなものは自分の中で完結したほうが、幸せなのかもしれない。本作のタイトルである、「勝手にふるえてろ」とはそういう自己の中で完結してしまう想いにもだえ苦しむ様子を象徴しているのかもと思えます。

でも、彼女を動かしたのは告白してきた二の存在。彼の存在が疎ましいながらも、なんか心の隅に気になってしまうと思ったとき、彼女はそれこそ死んでもいい想いで初恋のイチを探し、告白しようと試みるのです。その試みがどうなったかは観ていただくとして、僕は今のイチの何気ない発言がヨシカを苦しめたのがイマイチ理解できませんでした。イチとの過去の関係はほとんどゼロだったのだから、本当に彼が好きなのなら、今から関係を育くめばいいんじゃないかなと。何事もプラス思考過ぎる彼と付き合っている、来留実のほうがよほど恋愛上手に思えてならないのですが。。やっぱ恋愛はめんどくさく、難しい(笑)。