MOON

月と雷のMOONのレビュー・感想・評価

月と雷(2017年製作の映画)
3.4
泰子の心の中には常に「置いて行かれる寂しさ」がトラウマのように張り付いていて、智の心にも常に「置いて行かれるんじゃないかという不安」があった。そんな2人が心の安定を求め合うかのように寄り添うのは自然な流れだと感じた。

泰子が求め続けた愛の先にいたのは実母ではなく、たった半年足らずしかいなかった直子だったというのが皮肉。でも直子がフラフラしていながらも実母より母性に溢れているのは見て取れる。見知らぬおじさんが拾って養ってくれるという特異性もどこか納得させられる魅力が草刈民代さんの直子にはありました。田んぼのあぜ道でのシーンは初音さん、草刈さんともに秀逸だったなぁ。

ラストの展開には「まさか…」という衝撃を受けたけど、瞬時に「やっぱり」と思ってしまう部分もあって。直子の手帳と雷鳴と。あそこでの妙な胸騒ぎが的中した事に笑ってしまいそうになって、あ、これって泰子と同じだなと思った。あの家でずっと根を張るように生きてきた泰子と根なし草のようにフワフワと漂うように生きてきた直子と智。意外なようで納得の結末でした。

義妹のアリサを含めた疑似家族のような共同生活は束の間ながらもほっこりしたなぁ。見終わった直後はモヤモヤしたけど、時間が経つともう一度さまざまな感情を紐解きながら観たくなる。そんな作品でした。
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