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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のfujisanのレビュー・感想・評価

3.7
名優の共演で安心して観られる歴史ドラマでした。

ベトナム戦争当時、アメリカ大統領たちが勝てないと分かっていながら戦争を続けていた事を裏付ける資料=ペンタゴン・ペーパーをまつわる事実ベースの物語。

当時のニクソン大統領があらゆる手を使って記事の差し止めを図るもジャーナリストたちが強い信念を持って新聞記事に掲載し、アメリカ国内の反戦ムードを高めることに一役買った歴史を学べます。

ワシントン・ポストを率いるトップ役にメリル・ストリープが、同じくワシントン・ポストで記事掲載を主導した編集主幹役にトム・ハンクスという大御所俳優の共演、監督はスピルバーグというオールスタームービー。

この品質のものが定額で観られるのですから、ありがたいです。



機密文書そのものは早い段階で入手でき、映画は、それを発行できるのかどうかが焦点になります。

映画を観ていると、女性トップ、グラハムの弱腰さが気になってくるわけですが、映画の舞台は1971年。まだまだ男性社会の中、夫の死によって経営を引き継いだ女性トップに対する周りの目は厳しく、相当な精神的重圧だったことでしょう。

掲載すれば起訴される危険がある中、震える声で「やりましょう」と電話するシーンの演技は、さすが、20回以上アカデミー賞にノミネートされた女優の演技とうなりました。



□ 映画の主題

邦題は「ペンタゴン・ペーパーズ」ですが、原題は「The Post(ワシントン・ポスト紙)」でどっちかというと家族経営の新聞社をグラハムがどう守るか、がメインだったのでは。
そう、「ハウス・オブ・グッチ」のような感じ。


□ スピルバーグの新聞への愛情

当時の新聞社は印刷所の上の階に記者たちのフロアがあったんでしょうか。
記事をカプセルに入れてシューターを通して印刷所に送るシーンや活版で記事を組む職人達、ラストで映される巨大な輪転機のシーンなど、監督の新聞に対する愛情を感じました。


□ その他
映画では編集主幹ベン(トム・ハンクス)の自宅が作業場になっていましたが、自宅にたむろする記者達に自作のレモネードを売って小銭を稼ぐ娘さんがとても可愛かった。

ちなみにラストで大量の輸送トラックがワシントン・ポスト紙を運ぶシーンがありましたが、当時ワシントン・ポスト紙は自前の輸送トラックは持っておらず、あれは演出上のシーンのようです。
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