MasaichiYaguchi

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
ベトナム戦争が泥沼化していた1971年に大きなニュースとなった実話を基に、メリル・ストリープ、トム・ハンクス、スティーブン・スピルバーグ監督というハリウッドを代表する3人がタッグを組んで映画化した本作のテーマは「報道の自由」。
邦題になっている「ペンタゴン・ペーパーズ」とは、ベトナム戦争を分析して記録したアメリカ国防省の最高機密文書のことを指すが、その内容からは如何に歴代の政府が国民を欺いていたかが判明する。
だから時の政府は「臭い物に蓋をする」為に、その文書をスクープしようとするメディアに圧力を掛け、報道統制しようとする。
ここから「報道の自由」を巡ってメディアと政府の戦いが始まる。
その戦いの矢面に立ったのが、ローカル紙ワシントン・ポストの米新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハムであり、その編集主幹のベン・ブラッドリー。
キャサリン・グラハムは社主だった夫の突然死によって経営を引き継ぐが、今よりも遥かに女性の地位が低くて発言権が弱かった時代にあって、政府との戦いで社運をかけた決断を迫られていく。
このグラハムをメリル・ストリープは、抑えた演技で女経営者としての苦悩や葛藤を滲ませる。
そしてグラハムを鼓舞して支えるベン・ブラッドリーをトム・ハンクスが、報道の矜持を持つ男として人間味豊かに演じている。
本作や現在公開中の「ザ・シークレットマン」はニクソン政権時代のスキャンダルを題材にしているが、「ロシア疑惑」が濃い影を落とすトランプ政権や森友学園問題で揺れる日本の今の状況と無縁な話ではないと思う。