chihiro

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のchihiroのレビュー・感想・評価

5.0
演出が素晴らしい映画。
見ていてドキドキするようなスリルは無いが、非常にドラマチック。
ものすごい長回しカットや、セリフを被せまくるシーンがあるかと思えば、ひとセリフごとに割ってアングルを細かく切り替えるシーンがあり、メリハリの応酬である。

ポストの記者たちが文書を読むシーンのスピード感が印象的で、真剣な表情の記者たちの人数を真剣に数えて真剣に食事を提供する編集長ベンの妻がとても良い。そして、弁護士たちと記者たちが激論を交わす中、役員たちが電話で緊急会議を行う緊迫したシーンも演出が芸術的なほど見応えがある。このシーンにこの映画の核が詰め込まれている。
この映画には報道の役割の他にもう一つのテーマがある。女性の地位だ。少し前の時代の話だけど、現代的。
ポストの経営者であるケイが素敵なドレスを着て、重大な決断をする。その後の娘との会話でも同じドレスを着たままで、直後にベンや役員、弁護士と仕事の話をする場でもこのドレスである。全体的に黒く、武骨な印刷機の動き、スーツ姿の男性たちとの対比に彼女のドレスが効果を発揮している。そして、最高機密文書の内容の公開をすることを決定し、ケイが女性の経営者として自信を持ってその決定を伝える場面は、痛快であった。

最高裁を後にするケイに尊敬の眼差しを送る女性たちがおり、彼女が株式公開をする場に向かうときも同じように彼女を見つめる女性たちがいたことが思い起こされる。そして、判決を編集部に伝える電話に出たのも女性記者メグであった。女性の社会進出が始まった時代であることがよく分かる。

演出の素晴らしさばかりに言及したが、当然ながらこの映画はメリル・ストリープ、トム・ハンクスを始めとする優れた俳優陣無くては出来上がらなかったものだ。特に主演の2人は多くの見せ場を見せ場らしく素晴らしい演技で魅せてくれた。

結びのシーンもとてもウィットに富んでいて最後まで唸らせてくるな、と感じた。
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