蛇らい

蜘蛛の巣を払う女の蛇らいのレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
3.8
まさかこのシリーズで楽しかったという感想になるとは思わなかった。

今回は「リスベット・サランデル」にフォーカスしつつ、新たな人物像を構築するという非常にチャレンジングな仕上がりだ。リスベット役には、クレア・フォイをキャスティングする大胆な采配。近年の彼女の出演作品を知っていれば、なおのことアナーキーなリスベットのイメージとはかけ離れた役者である。

まずそのキャスティングがファンにとっては、是非の別れるポイントだ。結論としては、大アリ。これだけ世界に名を知らしめるほどのポテンシャルを持ったキャラクターを、ひとりふたりの役者が演じるリスベット像に留まらせておくのは持ったいなさすぎる。まだまだ引き出しがあり謎の多いリスベットという魅力的なキャラクターの人格の側面に、新しい色を塗り重ねていくことがこのシリーズを続ける指標であってほしい。

このシリーズは原作小説を6巻まで出版する契約になっているらしいので、最低でもあと2作品の原作は映画化できる。今後も違うタイプの役者が演じる新しいリスベットが生まれる可能性もある。どの役者が演じたリスベットが好き?という話題は物語が完結してからでも遅くはない。

次に全体の方向性について。初見の人にも楽しめるように今回はアクションに特化した展開が楽しめる。謎解きや、ミステリー要素の強かったこれまでとはうってかわり、天才ハッカーという側面をふんだんに駆使した想像しやすいダークヒーローが誕生した。画面の風合いや温度感などは、北欧のソリッドな雰囲気が活かされている。双子の妹との色使いの対比が美しく、妹の造形はフィギュアで欲しいくらいに完成している。衣装やガジェット、マシンなど身につけるものは洗練され、過去の作品よりも増してスマートで無駄のない印象を受ける。

ストーリー展開は、やや大雑把でご都合主義な演出も少なからずあるが、監督の前作『ドント・ブリーズ』からほぼ一緒の製作陣でこのクオリティが出せたことを誉めた称えたい。楽しいって大事だなとつくづく思う。

一番のお気に入りのシーンは、リスベットが駐車場で無造作に何台かの車の鍵をハッキングして開けるシーン。ランボルギーニに乗りたそうな少年に応えてランボルギーニに変更するリスベットがかわいらしい。そういうちょっとしたワンシーンがリスベットの人格を形成し、構築するので大事なシーンだ。
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