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アネットのぐのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
3.7
レオスカラックスの待ち侘びた新作。
同日2連続で見るほど期待があったものの、蓋を開けてみるとそれなりかな…とボーイミーツガールぶりに少し甘さを感じてしまった。

冒頭は最高の一言。メインの演者が散り散りになるまでは全てが良い。あぁカラックスの映画がはじまったな、と思うほどにらしさと面白さに溢れていて高揚感すらあった。
ただし、今作は長い尺と人物の描写、構成に歌とシーンの繋ぎだったりに精細さを欠いていたように思う。カット自体の美しさが以前に比べて劣っているとすら。
画面全体の配置やバランス、配色は美しく、差し色ともとれる中心をつくる色が存在しており、静止画であれば良しと思えるがミュージカルの性質上なのか大胆な編集が少なく、カットのリズムが緩やかで作品の流れが滞っている印象もあった。

個人的にはアネットがドローンに吊られて登場する際に手を振るシーン。
マリオネットの比喩なのは百も承知だし、糸が切れて自我が生まれる、なのだろうけれど安直過ぎて前後の短絡さを感じてしまった。もう少しあの部分を抽象的かつ大胆に描ける監督であるだけに惜しい。
コンダクターのシーンと冒頭は最高なので、あのシーンだけは何度も見たいと思える秀逸さ。
ホーリーモーターズのintermissionを期待していたので、そういった記憶に残るメロディも個人的にないのが残念でならない。
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