滝井椎野

アネットの滝井椎野のレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.0
深淵を除く男と、その末路を描く作品。なんだか凄かった。
先日『スパークス•ブラザーズ』を観に行った延長線で本作も鑑賞したが、スパークスというアーティストの幅の広さに改めて驚いた。
開幕してスパークスからアダム・ドライバー演じるヘンリー達作中人物へとバトンが渡される演出が素晴らしく、リアルとフィクションとの壁を上手く描いていたように思う。
全編通して流れる、不穏でどこか超常的な空気感が唯一無二で、サスペンスというよりは怪奇譚という言葉が似合うだろうか。昔好んで読んでいたエドガー・アラン・ポーやステファン・グラビンスキ、ラヴクラフトの作品のようで、美学的な作られ方をしているように感じた。ずっと人形として描かれているアネットと、灯りに照らされると歌い始めるというのがその象徴だろうか。あの人形は不気味だったな……。
最後のアダム・ドライバーがまた良い味を出しており、その狂気に役者としての凄みを感じた。ファンとして、彼に求めていたものをみることが出来て良かった。
滝井椎野

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