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夜の浜辺でひとりのmのレビュー・感想・評価

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
4.8
ホン・サンス監督らしく相変わらず弛緩していてたまにぶっきらぼうにズームしたりパンしたりするあの緩い空気の水面下で、主演女優キム・ミニの感情が蠢き沸々と煮えたぎり、そして不意に爆発して空気を破壊する。劇中で自身で言うように、まさに『爆弾』だ。
キム・ミニならきっと何かやる、どうやら監督はそう信じているようで、弛緩した空気の裏で神経を遣って彼女の感情の水面下の蠢きをじっと捉え続ける。時にファニーに、時に物哀しく、時に息を呑む緊張感で、周りの人と話す中で彼女の感情が密かに蠢いているのを見詰め続ける、その圧倒的なスリリングさ・・!
ホン監督の妻には本当に気の毒だが、この監督と女優との関係はホン映画をまた違う領域へと誘ったようだ。


キム・ミニはこの映画の熱い血潮だった。演技も魅力も最高に素晴らしい。
彼女と信頼し合い支える2人の女性の先輩達が登場してくれて良かった。


実生活での監督と主演女優の関係が反映されまくっているのは明白で、本人達もそれを隠す気も無い。明らかに男の言い訳のようなあざとい台詞もあったりするが(言ってる事は正しいがお前が言うなという感じだった)、実生活で受けた傷を映画にぶつけているような彼女に監督から贈る彼女へのある種の讃歌のような映画だった。


思った以上に読解力や想像力を試される作品でもあったので、もう一度観てまた考えたい。
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