Kumonohate

蜂の巣の子供たちのKumonohateのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.8
余りにも有名な「蜂の巣の子供たち」3部作の第1作。出演者は全員が素人、中でも戦災孤児や引揚孤児を演じる子どもたちは全員が正真正銘の戦災孤児、しかも殆どがロケによるロード・ムービーという、恐るべき奇跡のような珠玉の作品。

昭和22年の下関、広島や大阪を焼け出された戦災孤児やサイパンからの引揚孤児らが復員兵と出会う。彼らは、大阪にある感化院・みかへりの塔を目指して旅に出る。行く先々で様々仕事に従事しながら、一行は、下関〜岩国〜広島〜四国〜神戸と旅を続ける…。

死んだ母を慕い「母ちゃ〜ん」と叫ぶ。学校をのぞき込み、羨ましそうに地面に算数の式を書く。海を見たがる病気の仲間を背負って山を登るが、山頂に辿り着いたときに息を引き取ってしまう…。児童福祉法もへったくれも無い時代、社会の最底辺に置かれた彼らの姿が胸を打つ。演じているのが実際に同じような経験を経てきた子どもたちだけに、芝居の上手下手を越えたリアリティが心に迫ってくる。殆どのシーンを半ば即興で撮り上げたという清水監督の凄腕が、子どもたちの紡ぎ出すリアリズムを的確に拾い上げてゆく。スタッフ(孤児たちは制作スタッフとしても参加していた)が見切れたりもするが、そんなことは全く気にならない。

終戦直後が、子どもたちすら守ることの出来ない最悪の時代だったことは間違い無い。だが、一方で、時代に満ちていた活力や透明感もまた、本作にはパッケージされている。
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