デニロ

十六歳の戦争のデニロのレビュー・感想・評価

十六歳の戦争(1973年製作の映画)
2.5
本作を観る機会は幾度もあったのだが、監督松本俊夫、という名前だけで生理的嫌悪感を催し二の足を踏んでいた。如何に秋吉久美子が好きだといっても、いくら若者には時間がたっぷりあるといっても、予想できる退屈さと経済を比較衡量してしまうこともあろうというものだ。松本俊夫監督作品『薔薇の葬列』とはそんな作品だった。松本俊夫監督は良いとこの出なんだろうか。

製作されてから40数年。フィルムの劣化が激しくセピア色になってしまった。歯列矯正前の秋吉久美子と、何でまた役者の真似ごとなどやったのか下田逸郎の妖しい物語。もはや無理矢理感の漂うストーリー展開は、脚本山田正弘に吉田喜重の美の美を求めた松本俊夫の究極の選択なのだろうか。うんこ味のカレーを食うか、カレー味のうんこを食うか。戦争後遺症のケーシー高峰を背景に佐々木孝丸の戦争成金を配置し、豊川大空襲を語る。公開当時御存命の天皇による敗戦の玉音を流すシーンは本作の核心だ。

佐々木孝丸の妻を演じていた嵯峨三智子。秋吉久美子の母親役でもあるのだが眼元などの妖しい感じがそっくりでくらくらする。こどもごごろには公私ともに悪女の印象があるがどうだろう。晩年の彼女を本作で観て女優は天職だったのではないかと思う。下田逸郎の恋人役乙黒ますみというノーブルな女性は何者だったんだろう。その後の行方は杳として知れない。

シネマヴェーラ渋谷『秋吉久美子 調書』刊行記念 ありのままの久美子』にて。フィルム状態がよければ少しは納得することが出来るのだろうか。
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