MasaichiYaguchi

デトロイトのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.0
「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーテイ」のキャサリン・ビグロー監督の最新作は、1967年に発生したデトロイト暴動を実話ベースで描いていく。
本作を観ると、改めて「自由・平等・民主主義の国、アメリカ」が如何に幻想であるのか、そして、その現実が如何に苛烈であるのかがまざまざと心に刺さってくる。
この作品で描かれたのは50年前の出来事で、これ程酷いことは今は起こっていないだろうと考える人もいると思うが、映画「フルートベール駅で」で描かれた警官による黒人青年射殺事件は2009年に起こっている。
映画化されてはいないが、国際ニュースになった1992年のロサンゼルス暴動の発端も同じだ。
ニュース等で表沙汰になっていないものを数えれば、現在も日常茶飯事に起きていると思うし、トランプ政権になってからは更に件数は増えているのではないかと思う。
ビグロー監督は、デトロイト暴動の中で起こったアルジェ・モーテル事件にスポットを当て、その顛末を事件関係者の証言を基にリアルに再現して、観客に恰もその現場にいるような臨場感を味わわせる。
だから本作の山場であるモーテル内の40分間は、観ていて胃がキリキリと痛くなってしまう。
事件の結末は分かっていても苦いものを感じる。
後日談も映画のラストで紹介されるが、50年経っても未だに関係者に深い傷痕を残しているのと、そして未だに繰り返し同じような事件が起こっているという現実が心に重く残ります。