恐怖と狂気の一夜が明けて、ふぅ〜っと重い溜息が漏れる。心は鉛の様に重くなり、合わせて足取りも重くなる映画。
僕等は映画館を後にして、暖かいベッドに潜り込んで、時が経てばあの夜の事はいつか忘れてしまうけど、生き残った彼等は決して忘れなかっただろう。恐怖も、友を失った悲しみも、白人達への憎悪も、忘れなかっただろう。
1967年に米国デトロイトで発生した暴動の最中、実際に起きた「アルジェ・モーテル事件」を映画化。ほんの軽い気持ちのいたずらが、まさかこの様な狂気に満ちた死のゲームを招くとは、誰が想像しただろう。
黒人差別がエスカレートし、互いの人種の怒りと猜疑心が沸点に達した状態だったからこそ起きた悲しい事件。
白人警官役のウィル・ポールターの顔!!!
登場した瞬間からムカつく。嫌な奴感が滲み出て、ある意味役者として凄い。彼の今後の作品は観たくないぐらい嫌いになる。顔も極悪非道ぶりもトイ・ストーリーのシドに似ている。
警備員役ジョン・ボイエガ(フィン!)、元軍人役アンソニー・マッキー(ファルコン!)の演技も光るが、間違いなくウィル・ポールターの存在感が黒光りしている。
僕等もあのモーテルの壁に顔を向け、事件の目撃者としてその場にいるかの様な臨場感を追体験し、何とも遣る瀬無い思いに打ちひしがれる。
被害者達はあのモーテルで人権など全く守られず、人間としての尊厳をズタボロに傷つけられたのに、加害者達は法廷で人権も人間としての尊厳も守られている。
そんな話あるかーい!!!
虐げられた者の歌だけが、ただ悲しげに美しく響くラスト。
そこに希望を見出せるか?
右手に銃を。
左手に権力を。
差別意識を身に纏う。
それだけ揃えば、こんな事件は世界の何処かでこれからも必ず起きる。希望を見出す方が難しい。
ちなみに僕はあのモーテルで生き残るのは難しそうです。
ここであった事を口外するな?
はぁ〜〜〜〜!?
んな事出来るわk… BANG! BANG!
ってなると思う。