ひろ

デトロイトのひろのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.0
歴史の授業で学ばなかった事実。
自分が知っているのはせいぜいバスの白人専用座席に座った黒人が撃たれてしまった話程度。
こんな話が掃いて捨てるほどあり、それらが全て現実で、実際に起こっていたのだと思うとぞっとする。

当時の街の様子、雰囲気、世界観や緊張感がとてもリアルに描かれていて、自分たちもその場にいるのではないかと錯覚するほどだった。
そこまで引き込まれて、その上でこのような悲劇を目の前で見せつけられて…彼らにも私たちにも逃げ場はなく、ひどく苦しめられた。

件の拷問シーンは思っていたような拷問ではなかった。
あれは拷問なのだろうか?あそこにあったのは暴力、恐怖、エゴ、保身、そして狂気。
誰も何が正しさなのかなぜ暴力の嵐に巻き込まれたのか、何もわからず周りも見えなくなってしまうほどの狂気に満ちていた。
負の感情の連鎖に心を抉られた。
悲しくて、悔しくて涙がこぼれた。

追い詰められ、心が壊れ、何も信じることができなくなり、逃げた先で出会った警官に怯える姿が印象的だった。
事件からは何年経っても逃れることはできないし、心の傷は何年経っても癒えることはない。

誰もがとことんまで狂っているのではなく、一部の人はまともなようで救われた気持ちになったが、実際にあの時代にどれだけの人がまともだったのだろう。
黒人だから差別され、暴力を振るわれ、人生を壊され、時には殺され…
黒人たちが自ら「ニガー」という蔑称を用いていたのを見てやるせない気持ちになった。


最後に気になったことや思ったことを。

・なぜ競技用ピストルのことを黙っていたのだろう?何を言っても警官たちはメンツを守るために犯人を仕立て上げるし、余計なことを口走れば自分の身が危うくなると思ったからだろうか?

・『なんちゃって家族』で情けない童貞を演じていたウィルポールターの登場に最初はニヤついてしまったが、完全に下衆な警官になりきっていて感心させられた。
途中から下衆な警官にしか見えなくなり、彼が適役だったのかなと思った。

・日本は海外に比べて在住している外国人の割合が少ないが、近年では外国人観光客が増えている(特に歴史的な禍根が残る中国・韓国)。
白人と黒人のような差別関係にはならないと思うし、目に見える攻撃というのは少ないだろうが、今後どのようにすれ違っていくのか、そこでお互いにどうあるべきか考えることができるのかが問題となってくるだろう。


追記
トランプ政権の誕生に伴い白人至上主義者たちの活動が活発になった今、この映画を観たことに意味を感じた。
ひろ

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