keita

シェイプ・オブ・ウォーターのkeitaのレビュー・感想・評価

5.0
久しぶりにオールタイムベストが更新された。今この作品と出会えて良かった。

「多様性」なんてなかった冷戦時代の世の中で、掃除係の聞こえない女性、仕事がなく同性愛者の老人男性、人間に捕えられた半魚人、夫と冷め切った生活をする掃除係の黒人女性、アメリカとロシアで板挟みになる科学者といった、少数派としての生き物たちが小さくも強く生きる姿に心打たれた。

人間と半魚人がちぎるという、普通に描いたらホラーとかグロくなりそうなエピソード。しかも、2人は全く会話ができない。彼らに感情移入できるものかと思ったが、無慈悲に不合理に少数派が差別される厳しい現実の中で描かれていることで、素直に2人に感情移入することができ、そのエピソードがむしろ尊くなる。感情移入は人物ではなく、戦いの構図にするものだと改めて思い知らされた。日本の映画やドラマもオーバーな演技に依存せず、自然に観るものの心を動かして欲しい。

構図以外にも、形の無いものの映像表現がすごい。本作では、「愛」といった漠然としたものを、「水」という、溢れたり、乾いたり、状態変化したりするものを使って、繊細で丁寧に表現されていた。

また、ただ美しいだけの芸術的な映像作品になるのかなと思っていたが、物語中盤から、自分の好きな「追うもの・追われるもの」といったサスペンスがしっかりあってエンタメ作品としても楽しめた。
keita

keita