このレビューはネタバレを含みます
最近、頭が疲れ切ってることもあって(笑)、新作映画にトライする気力がちょっと失せてまして……でもやっぱり映画に癒されたくて、こちらを鑑賞。やっぱりすごいね、ギレルモ・デル・トロ監督。最後までぐいぐい観入ってしまえる、素敵な作品です。
アカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞している映画だから、今さら何を言うのって感じではあるんですが……こういう、ある意味“トンデモ設定”をぐいっと押し切って見せてくれる映画、すごく好きなんです。明らかにSFホラーの体裁なんだけど、実は恋愛映画でもあり、差別をえぐる社会派の側面もある。でも、それが全然押し付けがましくなくて、エンターテインメントとして完成されてるんですよね。だから、深く考えなくても普通に楽しめちゃう。そして、ラストなんかちょっと感動しちゃう。
一応、あらすじを追っておくと──
発話障害(話せない)の女性イライザが、宇宙センターのような研究施設で孤独な日々を送っているある日、アマゾンから運ばれてきた半魚人と出会い、手話で意思疎通を図るようになります。イライザは半魚人を救うため、友人や同僚たちと共に、彼を水中に返す計画を実行する……という物語です。大筋はSFサスペンスっぽいんですが、「なぜイライザが彼を助けようとするのか」ってところが、この映画の肝。
彼女が生きてきた人生そのもの──孤独、言葉を持たないことで受けてきた差別(おそらく職業選択も制限されてたはず)──そんな経験があるからこそ、囚われた半魚人に強く共感していくんです。だから、誰にも止められない。でも、結局は悲劇的な展開になってしまうんだろうなぁ……と、わかっていても、どうにもならない切なさを感じながら見守るしかない。この感じがたまらないんですよ(笑)。
博士のホフステトラーも軍人のストリックランドもかなりの曲者だし、イライザの理解者であるアパートの隣人ジャイルズ(ゲイの絵描き)や、掃除仲間のゼルダもキャラクターとしてしっかり光ってます。そんな濃い登場人物たちと一緒に、グイグイと話が展開していくスリルも見どころです。
語りたいことは山ほどあるんですが(笑)、まずはやっぱり主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)が素晴らしい。喋らない設定(首に傷がある)なのに、感情がものすごく伝わってくる。手話がどうこうというより、体全体でキャラクターを表現していて、本当にすごい。半魚人と抱き合うシーンも全然違和感がなくて、普通だったら“トンデモ”になりそうな場面を自然に見せてくれるのは、彼女の力が大きいと思います。
半魚人はCGっぽさよりも、生々しい“存在”として描かれていて、指を噛みちぎるシーンもあるし、常に塩水が必要な設定だから、画面はずっとウェット。快晴の出てこないデル・トロ監督のダークな色調に包まれているんだけど、それが逆に心地よいって人には刺さると思います。私は全然OKでした。
頭が疲れ切ってるくせに、観るにはちょっと異物感強めの映画ではありましたが(笑)、途中のミュージカルシーンとラストの海中シーンはやっぱり好き。単なるグロ映画じゃないです。おすすめです。あ、R18とかも全然気にならなかったです。