ろく

彼女の人生は間違いじゃないのろくのレビュー・感想・評価

3.8
この3年後に「由布子の天秤」で瀧内、光石のコンビは再び親子になる。

お金で解決するのは法が認めているけど、それだけでは解決できないものがあるんだよね。一番の問題は居場所かもしれない。仕事ってお金を得るための場所でもあるけど、その一方で自分の「居場所」なんだ。だからかな、それがなくなるってのは自分には考えられない。多分3億くらいもらったらもう仕事しなくても済むだろう。でもそうするかな。幸せ(お金による幸せ)は3か月も続かないんじゃないかな、そんな風に思っている。

そう、震災は確かに災害だけど一番問題なのは「自分のいる場所がなくなる」ってことなんだ。だから光石は日々パチンコばかりする。僕もパチンコをしていた。それは儲かるからではない。そう、「いる場所」がないからそこに行くんだ。いる場所もすることもないからあの液晶を眺めて無為に過ごす。それを堕落と言うのは簡単だけど、一方的に「居場所」を奪われた人に対し非難できないのでは、そうも感じている(僕は単なる堕落だった)。

そしてそれは瀧内も同じだ。彼女は土日と東京に深夜バスで行き、デリヘル嬢になる。お金だけだろうか。それもあるだろう。でも彼女の中で「何かしないとやっていけない」そんな気持ちがあるのではないだろうか。少しだけ自分の居場所を求める、それは間違った選択かもしれない。でも、それでも今の状況では窒息してしまう。だから身体を売る。今の澱みから「少しだけ」離れたいから。

ただ彼女は「離れない」。東京には住まない。深夜バスでよくあう女性に「一緒にすまない」と言われても笑って誤魔化してしまう。それは福島に仕事も、そして父親もあるからだろう。そこがどれだけ彼女にとって窒息しそうな場所だとしてもだ。これが福島の、震災の現状だと廣木は語る。彼自身が福島を見て、そこでの悲劇を見て(悲劇は継続してしまうものだ)言いたかったことではないか。災害は「忘れ去られる」が当事者にとっては「いまだ継続中」だ。

そんな瀧内も最後に犬を飼う。犬を飼うことで「離れない」、そんな決心が伝わってくる。その土地が好きだとか嫌いだとかの問題ではない。ただその土地に「居続ける」というのも大事な決心なのだ。

※瀧内公美に夢中である。あのやぶにらみの視線はなかなかできるものではない(過去あの視線を唯一、モノにしている女優がいた。梶芽衣子である)。アイドル女優にはできない「芯の強さ」を見せる女優だ。
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