きゃん

彼女の人生は間違いじゃないのきゃんのレビュー・感想・評価

3.5
福島県を舞台に、東日本大震災の深い傷を抱えながら生きていく人々の姿を描いた作品。戻る場所もなく、進む未来も見えない者たちが、もがきぶつかり合いながらも、光を探し求める。

福島の仮設住宅に暮らすみゆきと父の修。みゆきは平日は市役所に勤めているが、週末になると高速バスで東京に行き、デリヘルで働く。一方、修は震災で妻を失い、水田が汚染されて農業もできない空しさから、酒を飲み、保証金をパチンコに注ぎ込む日々。空疎な生活を送るみゆきだが、元カレとの再会やデリヘルで用心棒を務める三浦との触れ合いの中で少しずつ心が変化していく・・・

無機質に立ち並ぶ仮設住宅、汚染土の仮置き場、朽ち果てた避難指示区域の建物など被災地の現状がリアルに映し出されていた。それが東京のシーンになると震災が遠い過去の出来事に感じてしまう対比には何とも言えない気持ちになった。

津波で家が流され家族を失った人もいれば、家も家族も無事だけど心の傷を負い家族がバラバラになってしまった人もいる。原発の汚染水処理の作業員として働いているせいで周りから嫌がらせを受ける人もいる。皆が何とも言えない空虚さを内に抱え、埋められない悲しみを抱えて生きている。無事で良かったですね何て簡単に言えない。復興までの道のりは長いことを思い知らされた。

瀧内公美さんの体当たりの演技、表情が印象に残った。光石研さんと柄本時生の演技も良かった。時生くんと弟との会話のシーンは辛く苦しくも優しさがあった。海辺での笑顔が素敵だった。
きゃん

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