ちろる

彼女の人生は間違いじゃないのちろるのレビュー・感想・評価

3.8
みんな気丈にやっている。
淡々と。
東日本大地震の日は私の誕生日だったのだけど、その誕生日のディナーが出来なくて職場から家に帰る電車が無くなっただけの私は、あの震災について偉そうなことを書けるはずもなく、なんなら私は何となく震災のドキュメンタリーや映画を避けてきた気がする。

何故、彼女は渋谷に通ってまでデリヘル業に就いたのか。
彼女はこれからどこに向かっていくのかが分からなくて、でもその曖昧さがリアリティなのだろう。
守ってあげるだとか、頑張って下さいとかそういう言葉についつい敏感になってしまうくらいヒリヒリになってしまった心が、他の地域の人達と不協和音を奏でていくのかもしれない。
主人公の瀧内公美さんの体当たりの演技と涙、そして柄本時生さんの苦しみや悩みを通り越したような演技は印象的でそれぞれが散り散りになった話が集結していて何ひとつも解決していないのだけど、それがいまの福島の叫びなのだと思ったらエンドロールで涙が止まらなくなった。

まだ警戒区域は解除されず、遺体の沈んだ海は穏やかな見た目でまた今年を終える。
光石研の叫びが大切な人を海に奪われた人達の代弁のようになるのかは分からないけれど、様々な立場の人たちに目を向けた繊細な作品だった。
ちろる

ちろる