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あゝ、荒野 後篇のMOONのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
4.0
途中までは最高だった。裕二との対戦もバリカンとの対戦も殴り合う事で気持ちをぶつけ合って会話してるんだ、この人たち…って思えたし、その爆発する感情の熱量にも圧倒された。

でもラストファイトのモノローグ入るところでちょっと興醒めしてしまった。そこまでは表情で、行動で彼らの心情を丁寧に描いていたのに最後だけ急に分かりやすく感動を煽られてしまったのが本当に残念。

あと前篇でもチグハグさを感じていた社会問題を持ち出すパートが後篇でも雑音でしかなくて。生と死、繋がりを求める人々を意識させるための演出なのかもしれないけど、そのパートのせいで何度も気持ちを途切れさせられました。バリカンの父親とのあれこれも必然性を感じなかったなぁ。

しかし多くの疑問や不満を抱きながらも「凄い作品を観た」という感情が一番強く残った。男同士の狂気にも似た闘いは凄まじく、女性への優しさが溢れる描写は素敵だった。新次。バリカン。そして裕二。彼らから発散される熱量にこちらまで熱くなった。試合のシーンは息するのも忘れるぐらいの迫力。拳を交える事でしか繋がれない者たちの壮絶な闘いには自然と涙が出ました。

もちろん試合のシーンだけでなく、ドラマ部分も素晴らしくて。表情だけで語らせて余計なセリフを吐かない分、その余白の中にある感情を読み取る作業が楽しくてしょうがなかった。バリカンには何度も泣かされました。

すべてを掴んだ。目的を達成したところからの喪失。そこからの再起。このコントラストの鮮やかさにも揺さぶられっぱなし。ラストはミスリードだと思うのでバッドエンドとは思ってないけど実際はどうなのかな?いろんな解釈があって良いヤツかと。

マイナス部分は多々あり雑さも目立ったけど、5億点を連発してる部分が強烈すぎて高得点をつけざるを得ませんでした。これは映画館で観てこそかなぁ。
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