ベルベー

ライオン・キングのベルベーのレビュー・感想・評価

ライオン・キング(2019年製作の映画)
3.6
元がいいからさ、そりゃ面白いんだけど。だけど、「アラジン」の方が良かった…と思ってしまうのは贅沢か。いやでも、このハードルを超えなくては。ディズニーは覇道を自ら選んだからこそ、それが求められる。

「アラジン」のように過去の物語に現代風のアレンジを加えるでもなく、「トイ・ストーリー」のように過去の物語の続きを描くでもなく。本作が選んだのは愚直なまでの再現。

無論、CGの迫力に関しては本当に世界トップクラスを感じるんだけど、それが面白いかはやっぱり別問題なのかもって。

最初の「サークル・オブ・ライフ」からムファサが死ぬところまでは素直にナショナルジオグラフィック凄えー!!ってなって笑。とくにヤングシンバの可愛さたるや。そしてムファサがカッコ良ければカッコいいほどその後の展開が辛くなるだったり、スカーの名ヴィランぶりだったり、元の良さを再現するのも上手くいってたと思う。「王様になりたい」をリアルに再現したことで、若干面白味が減じたかなとか、思うところはあったんだけど…。

それが顕著になるのがティモンとプンバァの登場以降。凄く頑張ったと思うのだけど、その頑張りと結果が見合ってないというか。あの2匹に関してはいよいよガチ動物にしてどうするってキャラだったなあと。コメディリリーフとして原作とか四季を超えてないぞ!という。ひたすら安全牌で進めたからこそ、切れ味も落ちてしまったような。

そしてその後が長いんだよね…え、2時間かけるかこの話?っていう。効果的な場面を追加したのではなく、各パート間延びしてしまったような。ほぼ同じ脚本なのに退屈に感じてしまうのは所々の演出だったり、ユーモアの違いだったりするんだろうなあ。ハッピー役ではハッちゃけた芝居をしていたファヴローだけに、今回の思い切りの悪さはちょっと残念かなあ。いや、「ジャングル・ブック」も、もっと遡れば「アイアンマン」すら安パイの人だったかもしれないが。

この違和感って結局、「ライオン・キング」の本質が「超実写」と食い合わせが悪いからなんじゃないかなって。つまりシェイクスピア的な、戯曲的な話な訳です「ライオン・キング」。いやいや手塚治虫が元ネタとか、そういう話を始めると長くなるから割愛するけど笑。それを美麗なアニメでやった+動物をアニメで表現する面白さがあった+エルトン・ジョンが書いたミュージカル曲に今までにない面白さがあったというのが原作。その全てに、ある種舞台的な大仰さがあったから、大仰なストーリーと相性が良かったのでは。

ミュージカルに翻案して、ブロードウェイや四季で上演したらハマったって言うのも納得だよね。そもそもが舞台的な話なんだから。そういう話をガチ動物(ぽく見える超技巧CG)でやるなんて、そら食い合わせが悪いだろうと。

さらに言えば、リアルさを出そうとしているからこそ、ディズニーの偽善性も露わになってくるわけです。出てくる動物の性器がないとか。食事シーンがないとか。性欲は目を瞑るにしても食欲にすら蓋をするとかマジかよディズニーって話です。いや分かるよ?世界中の子どもたちに夢を届ける企業だもんねディズニー?でもじゃあアニメで良くない?っていう。極限までリアルにした映像でやってることは虚構塗れ…勿論美しいんだけど、なんとなく居心地が悪いというか、もっと尖った言葉を選べば「危うい」気もするよこの方針。

あとはナラのシーン増やすのはgoodだけどシエンジ始めとするハイエナのガチ悪党感増すアレンジ入ります?とか、スカーのイジョフォーが予想以上に朗々とヴィランしてて素敵(だからこそ曲カットは不満)とか、シンバのドナルド・グローヴァーがなんか軽い…とか、概ね変更点に不満が残るのよなあ…セス・ローゲンは良かったし、ビヨンセも意外と良かったけどさ。
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