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ボヘミアン・ラプソディのbutasuのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
2.0
全体的に曲が良すぎるから、それをとにかく全編に渡って遠慮なく流しまくっていけば間違いなく名作になる、所謂「勝ち確定」案件。

以下、この映画が好きな人とラミ・マレックが好きな人には絶対に読んでもらいたくない超個人的に思ったことの備忘録。不快感しか無いと思うので読まないでください。

何と言うか、ラミ・マレックがどうしても受け付けなかったんだよなぁ。確かに動きのモノマネは頑張っていたと思うけど。顔つきも苦手だし、なんだかすごく華奢で格好悪い。出っ歯もやりすぎ。そのせいか、主人公にいまいち共感を持てないままだった。特に前半は完全に調子に乗りすぎている感が無理。実際に才能があったから結果オーライなのかもしれないけど、少なくとも自分は全く好感が持てなかった。

特に6分の曲を偉そうな人に否定されるシーン。見ている観客は当然この名曲が世界的大ヒットになったのを知っているわけで、この偉そうな人を「見る目が無い」と馬鹿にするフレディたちに同意する気持ちになるようなつくり。それって映画的に全然盛り上がらない。もっと「当時としてはあまりに画期的なトンデモ作だった」という説明を丁寧にした上で、それなのにあまりの「良さ」に世間が認めざるを得なかった、というふうにしないと。しかもこの偉そうな人、実在しないキャラクターらしい。最低。実際に大成功しているから当たり前なのかもしれないけど、終始彼らがただ甘やかされているようにしか見えなかった。この映画、フレディは全く本当の"挫折"を経験していないのではないか、というように見える作りになってしまっていると思う。

勿論主人公はフレディなのだが、せっかく"クイーン"というバンドをメインにしているのだから、もう少し他のバンドメンバーについてもちゃんと描いてほしかった。尺をとれとは言わないが、もう少し役割分担や個性なりキャラクターなりを描けたのではないだろうか。ただの書き割り感が強い。

あとポール一人を悪人にしすぎているのも気になった。実際どうだったのかはわからないが、実際に生きている人物をここまで偏って描いて良いものか。

フレディがエイズにかかるあたりも描写が雑で急で感情移入しにくい。そもそも男性と関係を持っているシーンをほとんど見せないのも、なんだかこの題材を扱うにあたっての覚悟が甘いように感じてしまった。フレディが最後の恋人ジムと出会うのは、あんなおしゃれなシチュエーションではなく普通にゲイクラブらしいからね。嫌な改変。本人やメンバーがエイズ感染を知るのを、ライブの直前というタイミングに変えたのもお涙頂戴感が強くて受け入れ難い。本当はその数年後だからね。しかも実際はあのライブの直前にアルバム出したりツアーやったりしていたらしいし、もう全然事実と違う。脚色が過ぎる。この"エイズ"という題材を抽出し事実を捻じ曲げて美談に仕立て上げたやり口が物凄く嫌い。

ラストのライブ映像は確かにすごい迫力なのだがとても尺が長いので、これを見るくらいなら本人のライブ映像が見たいなぁと思ってしまった。口パクを見ていてもつまらない。本人以外の劇中の音声は、主に「声真似そっくりさん」のものを加工して使っているらしいね。なんだそりゃ。観終わった後実際のクイーンのライブ映像をものすごい検索してしまった(そしてとても良かった)。
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