★ Another one bites the dust
伝説のバンド《クイーン》。
本国イギリスにおいては《ビートルズ》に匹敵する評価だとか。
とても頷ける話ですね。
個人的な体験で言えば、実質的ラストアルバム『イニュエンドゥ』の衝撃は忘れることが出来ません。傑作揃いの初期~中期に比べると一段下に見られることが多いのですが、本作をきっかけに再評価されることを望みます。
何しろ、本作が描いているのは1985年まで。
第二次黄金期と言われた絶頂で幕を閉じますからね。本作で涙を流すことがあれば、その先にある“想い”にも触れてほしいのです。
ちなみに楽曲『イニュエンドゥ』は『ボヘミアン・ラプソディ』を彷彿させる複雑な構成。死を目前にしても衰えることのない創作意欲に痺れてしまいます。
…ってスミマセン。
映画の感想からかなり外れました。
本作はファンのためにある物語でしょう。
彼らの名曲に浸りながら、序列されたエピソードに触れていく…そんな構成なのです。
特に賛否が分かれる演出だと思ったのが、フレディ・マーキュリーの苦悩を主演のラミ・マレックの眼差しで語る部分。もっと鮮烈で具体的なエピソードを観たい…なんて思う人には物足りないかもしれません。
だけど、僕はそれで良いと思うのです。
物足りなさを感じたのならば、旋律を身体の深いところまで浸み込ませて“苦悩”を抱きしめれば良いのですから。音楽業界の頂点に立った男の“孤独”を感じれば良いのです。
だからこそ、本作は語らずとも濃厚な物語。
胸焼けする直前までに“壮絶な人生”を堪能することが出来る作品なのです。
また、ビジュアルに拘りを感じたのも嬉しい限り。メンバーの外見は当然として、ピアノの上に置かれたペプシコーラの数まで再現したのではないか…なんて思うほどに繊細な作り込みには感服の極みです。
まあ、そんなわけで。
ブライアン・シンガー監督の筆致が良い方向に作用した作品。最初から最後まで感動の涙が止まりませんでしよ。また、自然と身体が動いてしまう可能性があるので、劇場で鑑賞する場合は気をつけましょう。