ドナルド・サザーランド追悼2作目は初見の本作。
主演作だし比較的最近(6年前ですけど)の姿を拝見できるということでセレクト。
末期癌の妻とアルツハイマーの夫という高齢夫婦が周りや子供たちにも告げず密かにキャンピングカーで最後の旅に出るロード・ムービー。
原題は“The Leisure Seeker” これは2人が乗る年代物のキャンピングカーの名前。
アレッ? ジャケ写では邦題が英字でまるで原題のよう。
正直、目新しさはあまりありませんが、全編ヘレン・ミレン(当時73歳)とサザーランド(当時83歳)の2人芝居とも言える名優の円熟の技を堪能できます。
白髪白髭のジョン(サザーランド)は記憶がまだらの元大学教授。
末期癌ながら記憶はしっかりしている妻エラ(ミレン)に連れられ、敬愛するヘミングウェイの生家がある地へ向かいます。ジョンの危なっかしい運転で。
暗くなりそうな題材ですが2人のベテラン俳優によってほのぼのとユーモラスに描かれつつも、同時に厳しい現実と切なさが漂います。
全編英語ながら、実はイタリア人監督パオロ・ビルツィ(『歓びのトスカーナ』他)によるイタリア映画という変わり種。
2人が旅の途中で何度も懐かしがって見る過去の写真のスライドショーは、実際に認知症に効果的だと聞いた事があります。
やはり昔の記憶は人生の宝なのでしょう。
初めから全てが妻エラの計画どおりなのでしょうが、ラストはやっぱり切ない。
私は相手がいませんが、仲睦まじい夫婦ほど心に響くんじゃないでしょうか。
主役に脇役、善人に悪人なんでもござれ、一度見たら忘れない独特な顔と強烈な個性。
名優で性格俳優で名脇役だったドナルド・サザーランド。
ヘレン・ミレンは、これまで共演した中でもっとも頭のよい俳優の一人でしたと追悼のコメントをしています。
これからもたくさんの出演作をを楽しませていただきます。
合掌。