れおん

テルマのれおんのレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
4.7
少女のその微笑みは純粋で危険でどこか美しい。彼女の心の奥底に秘められた記憶は知られてはならないものであった…
“気持ちがいい”映画だった。心地よいのではなく、気分が高揚するのでもなく、”気持ちいい”。この映画を映画館の空間でゆったりとみていると気持ちが良い。
少女の少女らしさと奇妙で繊細な”心”の深さが相反するその情景はなんとも美しい。とても魅力的なその少女に僕は惹かれてしまった。
テルマを演じた、エイリ・ハーボーは終始美しく、彼女の息遣いと仕草はテルマという少女に心も身体もぴったりだった。薄いようで奥行きがある脚本は時間を有意義に使い、芸術作品を完成させる。西欧の感性に基づく、映像美と音感は我々を震わせた。特にカットごとの色彩の使い方が良い。どの画面を写し取っても、鋭い感性が光っている。編集技法もジャンルにとらわれないもので、しがらみがないように思えた。
性、宗教、愛。「人間」が避けては通れない危険なもの。これらの本質を素直につき、表現したテルマは偉大である。
無償の愛ほど美しいものはこの世に存在しない。
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