コミヤ

ちはやふる ー結びーのコミヤのレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.6
癖の強い新キャラも含め、数あるメインキャラクター達それぞれに対して愛を持って描き、上の句、下の句で描いてきたことをも丁寧に物語に組み込ませながら完結編としてこれ以上無いくらい見事な着地を見せてくれた!ほぼ文句無しの大満足!三作目にして最高傑作、というより前ニ作はこの「結び」の為の布石に過ぎなかった!

瑞沢高校かるた部創設から2年が経ち、高校3年生になった千早達に残されたのは1年だけ。そんな物語冒頭から中盤にかけて「終わり」の予感というものが画面からひしひしと伝わってくる。2人の新入部員という新しい「始まり」の予感も感じられるが太一に端を発するこの「終わり」の予感というものはそれを遥かに圧倒している。

本作の最重要人物は間違え無く太一。千早の為にかるたを続けていた太一だが、大学受験や千早の新への思いが原因でかるたへの迷いが一層に強くなってしまう。前ニ作では一途に千早の事を思っていた彼が本作で初めて直接思いを伝える。しかしそれは彼、そして観客が望んでいたものとは真逆の状況で起きてしまう。この踏切でのシーンで「終わり」の予感は臨界点に達する。

しかし前半部に入念なセッティングを施したことで、このシリーズで一貫して描かれてきた"思いの伝播"というものが後半、ここぞという場面で次々と描写されていき、あの素晴らしい終幕を迎える。
この思いが伝播するという場面では悉く泣いてしまった。各キャラにそれぞれ独自の役割を持たせて描かれるこれらのシーンは単純なお涙頂戴なシーンではない。確実に生きた人間の純粋な思いだと実感できるからこそ感動できる。

「一瞬を永遠に封じ込めることができる」という太一の精神的な師匠となる周防の言葉。それは千年前の人々の思いを百人一首としてかるたの札に残すという物理的な意味だけでなく、人間一人一人の思いが別の誰かに、そして次の世代に受け継がれることで永遠不滅のものとなるということも意味する。

原田先生や周防という先人達の思いを受け継いだ千早や太一達が今度は新しい部員達にそれを伝える。その過程を繰り返すことで人の思いは永遠に生き続ける。ほとんど「リメンバー・ミー」と一緒!

だから彼らをもう映画では見る事ができないもののその思いが次に伝わったと思えばその悲しさは和らぎ、むしろ希望の方が大きくなる。ちはやふる3部作としては完結したけど同時にこの物語は一生完結することはない。これは「マインド・ゲーム」と一緒!

個人的には新入部員のあの二人のその後を見たかった… あと話のセッティングが多少上手くいき過ぎてる感はある。

競技かるたというマイナースポーツを日本古来の伝統的風景、音楽を交えながらも現代日本における熱血青春ドラマとして真摯描いてきたちはやふる3部作。数あるトリロジーの中でもトップクラスに好き!これから何回でも繰り返し観たい。

小中学生や家族連れが多かったけど自分は隣のおっさんと一緒においおい泣いてしまった。

今年ベスト級!
コミヤ

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