コミヤ

検察側の罪人のコミヤのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
4.3
異常な密度。高速の会話劇、細か過ぎるカット割り、ぶつ切りだったり食い気味な編集、面白い構図とカメラワーク、役者達が見せる各々観たことの無い魅力を持った圧倒的演技。そのあまりのテンポと情報量の多さで一瞬でも油断したら置いてけぼりにされてしまう。実際置いてけぼりにされたのになんだこれ、超絶面白い!と思ってしまう謎の魅力がある作品。そして「大声でうわー!と叫ぶ邦画大体駄作説」の反例として重要な作品でもある!

過去と現在を繋ぐ二つの事件を軸とし、その中に政治家、ヤクザ、出版社、闇ネットワーク、そしてインパール作戦など様々な要素がぶっ込まれている。これら全ての根底に現代日本に対する原田監督の怒りや批判のようなものを嫌でも感じる。
このように他の監督ならもっと長尺になること必至な情報量を力技で120分に落とし込んでいるので、どうも纏まりの悪さを感じてしまう。それに加えて感情の積み上げが十分になされないまま物語が進行するので圧巻の演技合戦も見せ場としての魅力に留まってしまってる気がする。
またあの人の異常性を際立たせるためにも「孤狼の血」の松坂桃李、「ボーダーライン」のエミリーブランドのように、鑑賞者と視点を共有する役割を持ったキャラクターは必要なのではとも思った。(勿論ニノがその役割を担うべきなんだろうけど積み上げのないまま中盤の狂気の取り調べシーンになる為、最初から少しずれてる人なのかと思ってしまった。)

本筋とは全く関係ないけど個人的ウケたポイントは味わい深過ぎる松重豊が暗躍する闇ネットワークの世界。まるでジョン・ウィックの殺し屋ネットワーク!日本でもこういう世界が描けるのか!という謎の興奮があった。これが絡んでくると大分リアリティが無くなってしまうけど。
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