無知A

ニワトリ★スターの無知Aのレビュー・感想・評価

ニワトリ★スター(2018年製作の映画)
3.0
ロケットから始まり、下ネタ、草、自堕落な生活といった一般から離れたものを前半は提示していた。しかし、ヤクザを登場させ、暗躍させる事によって、善悪を分け、そこに感動エピソードを加え、主人公側を善としている。だが、主人公や作品そのものに対して嫌悪感を持っている方が多いのを見ると、この構造は失敗していると考えられる。そこで、再考すると、悪を極限まで貫いていたヤクザではなく、序盤に行われた世界観の色付けに問題があったのだと思う。勿論、世界観の向き不向きもあるが、一番の問題は何の前触れもなく、あれらの要素を投下してしまった事にある。やはり、作品の序盤を観ている時というのは、世界観を掴むために観客も繊細になるので、インパクトが強すぎると却って裏目に出てしまうという事だろう。例えば園子音監督も過激な映画を作っているが、あちらは緩やか且つ安定した世界観を表現した後に、一気に暗い底へ物語と共に観客をたたき落としている。その点、今作はただ叩き落としているだけに感じる。構造としての感想は以上の通りである。

最後に内容について。今作の終盤では神様について幾度となく強調されていた。神の代行人と自称する男がヤクザを斬ったり、各主人公が神様について言及している場面があった。人は、予め運命を聞かされ、それでも会いたい人がいる場合、記憶を失って生まれてくるという話を最後に持ってきていて、素敵な話だと思う。しかし、これを最後に持って来てしまった事には納得がいかない。重たい要素を沢山落とし込んでいただけに着地点と釣り合っていないと思った。

結論として、何がメインテーマなのかがいまいち分からない作品だった。ただ、何も考えずに見ると面白いと思える程の見応えのあるシーンも少なくない。
無知A

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