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さらば青春の光のけのネタバレレビュー・内容・結末

さらば青春の光(1979年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

邦題が非常に良い味を出していると思う作品の一つ。

青春と聞くと爽やかで切なく、苦くとも甘いものを想像するかもしれないが本作で描かれている青春は、いわゆる反抗期というものが近いかもしれない。
夜な夜なスクーターを走らせクラブに集まり、ドラッグをあおりながらナンパに明け暮れる姿はヤンキーのようだが、実家に暮らし度々両親からその服装や生活態度を注意されるのを見るにただの少年であることがわかる。
「人と同じは嫌だ」と言いながら同じようなカスタムをしたスクーターに乗りながら同じようなモッズスーツを着る姿は、程度の差こそあれど日本の中高生とあまり変わらないように思われる。父親が「お前らは一人じゃ何もできない、生き方に芯がない」と言われるが全くもってその通りだ。

主人公にとって、社会の束縛への反発心の表れ、そして同じ反発人を持った仲間がいるという唯一の心の拠り所が「モッズ」そしてスクーター(vespaやランブレット)なのだろう。

住処も恋人も仕事もスクーターも失った主人公が再び訪れるのはまさに一番青春が光っていたブラントン。
全て失った主人公に唯一残されていたのが、「モッズ」という生き方だったのだろう。
だが、そこで憧れていたモッズのエースでさえも、ただの社会の歯車の一つとして生きることを受け入れており、唯一の支えだった「モッズ」の精神すらも崩壊してしまった。

主人公の心情とは対照的に美しい自然の中、何かを心に決め崖に向けて走り出す主人公、そして崖から投げ出されたvespa。

きっと主人公は唯一の心の拠り所だった「モッズ」を捨て去り、青春の光に別れを告げたのだろう。

この先の主人公を待ち受けるのは何だろうか。
ずっと続いていく絶望なのか、新しい人生の幕開けなのか、それともただ無気力な人間になっていくのか。

果たして、モッズと共にあった青春は彼に取って光だったのか。

美しい景色、爽やかな音楽と正反対のような彼の心。この陰湿なギャップも、青春そのものもかもしれない。
青春は必ずしも美しく、爽やかだとは限らない。
け