荒野の狼

ロダン カミーユと永遠のアトリエの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
ロダンの女性関係を中心に、「地獄の門」を制作中から「バルザック」完成後までを描く。原題は「Rodinロダン」。ロダンの作品は鑑賞の機会も多く親しんできたが、生い立ちなどを描いた映画などは少なく、私にとってロダンの私生活・彫刻家としての苦悩をはじめて学ぶ機会となった。
彫刻家としては、ロダンの制作現場と弟子たち、ユーゴ―の像制作の過程、バルザック像の制作過程が描かれ興味深い。同時代の芸術家としてはセザンヌとモネが登場し、遅咲きのロダンはバルザックの評判も悪く苦悩するのだが、世に認められないセザンヌを励ますロダンには説得力がある。本作で登場するセザンヌは弱弱しく礼儀正しいのであるが、これは映画「セザンヌと過ごした時間」での描かれ方とは対照的。同映画で大きな役割を演じたセザンヌの親友ゾラは、本作ではユーゴ―像の制作の過程と「ロダンとゾラはフランス人ではない」と世間の非難を受けているという話で名前だけ登場。日本との関係では、ラスト近くで箱根彫刻の森美術館のバルザック像のブロンズ像が登場。また、ロダンが50点を超える作品のモデルになった日本人女優の花子(本名は太田ひさ)も登場し日本語と英語のセリフがある。花子をデッサンしている時に、花子の筋肉を「フォックステリアのようだ」としたロダンだが、このシーンが映画に登場。ちなみに花子のブロンズ像は2019-2020年に日本で開催の「コート―ルド美術館展」でも展示された。
私生活は、内縁の妻と子供、弟子で愛人のカミーユ・クローデル、モデルの複数の女性らとの関係が描かれる。カミーユとの関係は、後年カミーユが精神病院で生涯を終えるという点については触れられず、映画では完結していない印象はある。カミーユに関しては、むしろ彼女の作品群がいくつか紹介されており、それに込められた想いが理解できる内容になっている点が貴重。カミーユの作品を今後鑑賞する際に、大いに参考となり、また悲劇的で薄幸の彫刻家カミーユ・クローデルの人と作品に対する興味が拡がる映画としても重要。
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